【2026年10月】ASML、韓国向け交換部品を2027年1月から10%値上げと報道──装置価格の主導権が「顧客」から「装置メーカー」へ移る構造

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結論:ASMLが韓国向けの交換部品を一律10%値上げする計画だと、韓国メディアThe Elecが報じました。部品だけでなく新規の露光装置も値上げ余地を探っているとされ、装置価格の決定権が「巨額投資をする顧客」から「代替のない装置メーカー」へ移りつつあることを示す動きです。いずれも報道ベースで、ASMLの公式発表ではありません。

目次

何が報じられたのか

TrendForceによると、ASMLは9月上旬、韓国法人を通じてSamsung ElectronicsとSK hynixに通知しました。2027年1月納入分から、EUV・DUV双方の交換部品の価格を10%引き上げる内容です。消耗品から、故障や性能低下で交換する主要部品までが対象とされます。全品目への一律10%は異例で、顧客の利益のより大きな取り分を求める意図があるとの見方が業界筋から出ています。

背景には、ASMLの収益構造があります。2025年のサービス・部品・アップグレード事業の売上は81.93億ユーロで、総売上326.67億ユーロの約25%でした。同社はこの分野が今年30%超伸びると見込んでいます。装置を売った後に続く「ストック型」の収益に手を入れる動きと言えます。

装置価格でも綱引きが続く

7月には、The Informationの報道をロイターが伝える形で、ASMLが成熟世代のDUV装置で10%の値上げを求め、一部の中国顧客が受け入れたと報じられました。一方、最大顧客のTSMCはEUV・DUVの両方で値上げに抵抗していると伝えられています。TSMCは1台約4億ドルのHigh-NA EUVの採用を遅らせ、2029年ごろのA13世代でも使わない見通しだとも報じられました。IntelがHigh-NAを18Aの量産に使い始めたのと対照的です。

ASMLのダッセンCFOは、同社には価格決定力があり価値ベースの価格設定を進めていると説明しています。EUVは約2億ドルの装置が2027年末までほぼ売り切れとされ、ASMLは今後2年間、EUV・DUVの生産能力をそれぞれ年30%拡大する計画です。供給が需要に追いつかない局面では、価格交渉の力関係は売り手に傾きます。詳しい受注動向はASMLの2026年見通し上方修正の解説をご覧ください。

値上げはASMLだけの話ではない

同じ動きは周辺の装置メーカーにも広がっています。Applied Materialsは価格引き上げが利益率を支えたと説明しており、同社の50億ドル規模の研究拠点の投資余力もそこにあります。Tokyo Electronは既存モデルを含む価格調整を交渉中と報じられ、BernsteinによればTokyo Electronは粗利益率50%超を目標としています。部材面でも、成膜装置向け部品のリードタイムが4カ月から最長10カ月に延びたとETNewsが伝えており、コスト上昇圧力は部品供給網の奥まで及んでいます。

顧客側の支払い余力:TSMCの設備投資

値上げを受け止める側の体力も確認しておきます。TSMCは10月15日の決算で、2026年の設備投資を600〜640億ドルとし、2026〜2028年の投資額は直近3年間の約1,010億ドルを「大幅に上回る」と述べました。具体額は示していませんが、UBSは2027年に約900億ドル、2028年に約1,050億ドルを見込み、Morgan Stanleyは830億ドル・920億ドル、Goldman SachsとBofAは2027年に約850億ドルと予想しています(いずれもアナリスト推計)。TSMCの7〜9月期決算で示された旺盛な需要と収益力が、装置メーカーの強気の価格交渉を支えている構造です。

一方、TSMCの粗利益率が低下している点や、AI関連株の急落で意識された資金調達リスクを考えると、装置コストの上昇は顧客の利益率を圧迫します。8インチ供給逼迫によるファウンドリ値上げのように、コスト増が最終的にチップ価格へ転嫁される連鎖も起きています。

構造的に何が起きているか

第一に、EUVという代替のない装置を握るASMLが、販売後の部品・サービスまで含めて価格を設計し直しています。第二に、顧客は価格交渉で対抗しつつも、生産能力確保のために受け入れざるを得ない場面が増えます。第三に、HBM価格の上昇や米州の300mm装置投資拡大が示すとおり、需要側が強い間はコスト上昇が価格に転嫁されやすく、装置メーカーの価格主導が続く可能性があります。ただし、AI投資の収益性への懸念が再燃すれば、顧客の価格受容度は変わり得ます。今後は、ASMLの新規装置価格が実際に改定されるか、TSMCの交渉結果がどうなるかが焦点です。

出典:TrendForce「ASML Reportedly Plans 10% Parts Price Hike in South Korea Starting Jan. 2027」(2026年10月12日、The Elec報道を引用)/TrendForce「ASML Reportedly Seeks Higher Tool Prices as TSMC Pushes Back」(2026年7月16日、The Information・ロイター報道を引用)/Startup Fortune「Chip stocks snap their worst losing streak since 2008 on TSMC’s spending」(2026年10月、TSMC決算・アナリスト推計)。数値は報道・推計に基づきます。


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