【2026年10月】TSMC、7〜9月期は過去最高益も粗利益率は66.4%へ低下──2nm立ち上げの負担と設備投資600億ドル超が示す「供給枠の先払い」構造

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結論:TSMCの2026年7〜9月期決算は、売上・利益とも過去最高を更新した一方で、粗利益率は66.4%と前四半期から1.3ポイント低下しました。減益要因ではなく、2nm世代の量産立ち上げに伴う「先行コスト」が表面化した結果です。同時に2026年の設備投資見通しは600億〜640億ドルへ引き上げられたと報じられており、TSMCは「儲かっているから投資する」段階から、「次世代ノードの供給枠を先に作り、利益率で一時的に払う」段階に入っています。以下、報道ベースの数字をもとに構造を整理します。

目次

決算の事実関係:過去最高でも粗利益率は前期比で低下

各種報道によると、2026年7〜9月期の売上高は約1.494兆台湾ドル(約467億2,000万ドル)で、会社ガイダンス(446億〜458億ドル)を上回りました。ドル建てでは前年同期比41.2%増、台湾ドル建てでは同50.9%増とされています。純利益は7,630億台湾ドル台で、市場予想(約7,463億台湾ドル)を上回り、6四半期連続の過去最高とされます。EPSは29.43台湾ドルです。

注目すべきは利益率です。粗利益率は66.4%で、前年同期の59.5%からは大きく改善している一方、前四半期の67.7%からは1.3ポイント下がりました。営業利益率は58.7%、純利益率は51.1%です。需要が強く価格も強いにもかかわらず、利益率が頭打ちになった点が、今回の決算の読みどころです。

なぜ粗利益率は下がったのか:2nmの立ち上げ負担

報道では、粗利益率低下の主因は2nmの初期量産に伴う利益率の希薄化とされています。ウエハー売上に占めるノード別構成比は、2nmが8%(前四半期は3%)、3nmが33%、5nmが28%、7nmが10%で、7nm以下の先端ノードが全体の79%を占めました。

新ノードは量産初期、歩留まりが成熟するまで原価が重く、減価償却も先に立ちます。つまり2nmの比率が3%から8%へ急上昇した四半期は、収益性が一時的に押し下げられやすい局面です。これは過去の3nm立ち上げ期にも見られた構造であり、需要の弱さではなく、供給能力を前倒しで積み上げている証拠と読むのが自然です。

先端ノードの逼迫そのものは、直近の売上動向を扱った記事でも整理しました。成熟ラインを先端パッケージへ振り向ける動きについては、TrendForceの8インチ供給の分析とあわせて読むと、TSMCが「どこに設備と人員を集中させているか」が見えてきます。

HPCが売上の68%:顧客構成がAI一色に近づく

用途別では、HPC(高性能計算)が売上の68%を占め、前年同期の57%から大きく上昇しました。スマートフォンは21%、車載とIoTはそれぞれ4%と報じられています。TSMCの成長は、事実上AIアクセラレーターとデータセンター向けロジックが牽引しています。

ここで重要なのは、HPCの比重が高まるほど、TSMCの業績がAI投資サイクルへ連動しやすくなる点です。裏を返せば、顧客側のAI設備投資が続く限り、先端ノードとCoWoSなど先端パッケージの供給枠は売り手市場が続きます。メモリ側でもHBMの供給枠が価格と契約を決める構造が進んでおり、Micronの決算を扱った記事やSK hynixとCoWoSの検証報道は、ロジックとメモリが「パッケージで一体の供給網」になりつつあることを示しています。

設備投資は600億〜640億ドルへ:投資の中身は「次の枠」づくり

第3四半期の設備投資は約138億4,000万ドルで、1〜9月累計は約406億4,000万ドルと報じられています。通期の設備投資見通しは600億〜640億ドルに引き上げられたとされ、売上高比では1割台前半の水準です。主な投資先は先端プロセスとAI関連の生産能力で、2nmの拡張とCoWoSの増強が中心と見られます。

立地面では、米国の先端ロジック投資も続いています。テキサス州での新キャンパス検討の報道は、需要だけでなく税制優遇の期限や政策環境が投資タイミングを左右することを示した例でした。また、競合の動きとしてSamsungファウンドリの赤字縮小報道も、先端ロジックの競争軸が「微細化」から「HBM4ベースダイ」などメモリ連携へ広がっていることを示唆します。

なお、第4四半期ガイダンスは一部の報道で売上523億〜543億ドル、粗利益率65〜67%とされていますが、すべての報道で確認できたわけではなく、会社の公式資料での確認が必要な報道ベースの数字です。

構造的に何が起きているか:利益率を「供給枠の先払い」に使う

今回の決算を一言で表すなら、TSMCは利益率の一部を、次世代ノードの供給能力を先に確保するためのコストとして使い始めた、ということです。2nmの比率が上がる局面では利益率が一時的に下がり、歩留まりと規模が整うと再び改善する、という波を繰り返します。投資家やサプライヤーが見るべきは、粗利益率の絶対水準ではなく、2nmの比率、設備投資の配分、CoWoS能力の拡張ペースの三点です。

この構造は、装置メーカーにとっては需要の裏付けになります。ASMLの売上見通し上方修正やSEMIの米州300mm装置投資予測とも整合的で、先端ファウンドリの投資拡大が、露光装置から後工程まで装置需要を押し上げる流れは続くとみられます。一方で、メモリ価格の上昇はHBM価格の予測にもあるように、AIサーバーのコスト構造を重くします。ファウンドリの強さは、顧客側の採算に対する圧力と表裏一体です。

今後の注目点

今後は、2nmの歩留まりと利益率が何四半期で通常水準に戻るか、2027年の設備投資計画がどの水準に置かれるか、CoWoS能力の増強が顧客の需要に追いつくかが焦点です。業績が過去最高でも利益率が下がる局面は、成長鈍化のサインではなく、次の供給枠を作るための投資が先行しているサインとして読むのが、現時点の合理的な解釈でしょう。

出典:Investing.com「TSMC Q3 2026 slides」(2026年10月15日)、TradingKey「TSMC Q3 Earnings Beat Estimates」(2026年10月15日)ほか。数値は報道ベースであり、TSMC公式の決算資料での確認を推奨します。


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