この用語集は「半導体業界を経営・投資・M&Aの視点で理解したい」ビジネスマン・投資家・M&A担当者のために作成しています。技術用語の定義だけでなく、ビジネス構造・収益モデル・投資判断への応用まで解説します。現在60本以上の専門用語を6カテゴリで体系化しています。
この用語集の使い方
半導体業界には独特の用語が多く、技術系・ビジネス系・地政学系と領域をまたいで理解が必要だ。この用語集では各用語を以下の視点から解説している。
- 意味と定義:用語の基本的な意味
- ビジネス構造:業界の中でどういう役割を持つか
- 収益・投資視点:投資・M&A判断にどう使うか
記事を読む前にここで用語を確認する、または記事を読んでわからない言葉をここで調べる、という使い方を推奨します。
① ビジネスモデル|誰がどう稼ぐか
半導体企業の「稼ぎ方の構造」を理解するための用語です。投資・M&A判断の基盤になります。
ファブレス(Fabless)
自社工場を持たず設計に特化するビジネスモデル。代表企業はNVIDIA・Qualcomm・AMD。営業利益率40〜60%超を実現できる高収益モデル。
ファウンドリ(Foundry)
他社設計の半導体を受託製造する専業モデル。代表企業はTSMC・Samsung Foundry。1兆円超の設備投資が参入障壁。ファウンドリビジネスモデルの詳細も合わせて参照。
IDM(垂直統合型デバイスメーカー)
設計から製造まで自社で一貫する企業モデル。代表企業はIntel・Samsung・ローム・三菱電機。設備投資負担が重く、ファブレス・ファウンドリ分業への対応が課題。
TSMC(台湾積体電路製造)
世界最大のファウンドリ。最先端半導体の約90%を製造。Apple・NVIDIA・AMDが依存する代替不可能な存在。企業分析記事も参照。
IPライセンス・ARM型ビジネスモデル
CPU設計資産(IP)をライセンス提供し、ライセンス料+ロイヤルティで稼ぐ超軽資産モデル。ARMがスマートフォン向けCPUの約99%を握る。RISC-Vという挑戦者も参照。
EDA(設計自動化ツール)
半導体チップ設計を自動化するソフトウェア。SynopsysとCadenceの米国2社が世界市場の約70%を独占。すべてのチップ設計に必須の「設計産業のインフラ」。
ASIC(特定用途向け集積回路)
特定の用途に最適化した専用チップ。GoogleのTPU・AmazonのTrainium・AppleのM4がすべてTSMCで製造されるASICの代表例。NVIDIAへの依存低減が開発動機。
② 製造プロセス|どう作るか
半導体の製造プロセスに関わる用語です。装置メーカー・材料メーカーの評価に直結します。
EUV(極端紫外線露光)
波長13.5nmの光で回路を転写する最先端リソグラフィ技術。ASMLが露光装置を世界シェア100%独占。東京エレクトロンが塗布・現像装置を世界シェア100%独占。
エッチング・成膜(CVD/ALD)
エッチング=不要な膜を精密に除去する工程(Lam Research・TEL)。CVD/ALD=薄膜を形成する工程(AMAT・Lam・TEL)。先端プロセスで原子層単位の制御が必要に。
枚葉式・バッチ式
枚葉式=ウェハ1枚ずつ処理。先端プロセスで不可欠なトレンド。バッチ式=数十〜百枚まとめて処理。成熟プロセスでは主流。SCREENが枚葉式洗浄で世界首位。
ウェット洗浄・パターン倒れ・乾燥技術
ウェット洗浄=液体でウェハを洗浄する最頻出工程。パターン倒れ=乾燥時の表面張力で回路が倒壊する先端プロセスの最大課題。マランゴニ・超臨界乾燥で解決を目指す。
CMP(化学機械研磨)
ウェハ表面を原子レベルで平坦化する工程。先端プロセスでは数十回以上実施。Applied Materials(首位)・荏原製作所(2位)。スラリー(消耗品)ではフジミインコーポレーテッドが首位。
TSV(シリコン貫通電極)
チップを垂直接続する技術。HBMの多層積層とCoWoSのシリコンインターポーザーに不可欠。ウェハ薄化(30μm以下)ではディスコが世界首位。
歩留まり(イールド)・先端プロセス
歩留まり=良品率。半導体製造の収益性を決定する最重要指標。TSMCがSamsungより先端プロセスで優位な最大の理由。先端プロセス=7nm以下の最先端製造技術。
ムーアの法則・エピタキシャル成長
ムーアの法則=約2年でトランジスタ数が2倍になる経験則。エピタキシャル成長=高品質薄膜形成技術。SiCパワー半導体製造の核心技術としてEV普及とともに需要急増。
ウェハ大口径化(6インチ・8インチ・12インチ)
ウェハ直径を大きくすることでチップ1個あたりのコストを削減する技術トレンド。SiCパワー半導体では6→8インチへの移行が最大の技術課題。ロームが2026年に2年前倒し達成。
③ 製品・デバイス|何を作っているか
半導体チップの種類を理解するための用語です。需要動向の把握に直結します。
HBM(高帯域幅メモリ)・CoWoS
HBM=DRAMを垂直積層した高付加価値AI向けメモリ。通常のDDR5の約10倍の単価。CoWoS=HBMとGPUを接続するTSMCのパッケージング技術。AI半導体の中核。
DRAM・NANDフラッシュ
DRAM=コンピュータの主記憶装置。Samsung・SK hynix・Micronの3社で世界の95%を寡占。NANDフラッシュ=ストレージ用不揮発メモリ。AI時代のエンタープライズSSD需要が急増。
GPU・SoC
GPU=並列演算に特化。AI処理の中核チップ。NVIDIAが約80%のシェアを独占。SoC=CPU・GPU・AIエンジン等を1チップに統合。スマートフォン・車載・エッジAIの主役。
パワー半導体(SiC・GaN)
電力変換・制御に特化した半導体。EV1台あたりガソリン車の約5倍を使用。SiCがEV向けインバーターで急普及。ローム・三菱電機・東芝が日本の主要メーカー。
イメージセンサー・ニアラインサーバー・液冷データセンター
イメージセンサー=ソニーが世界シェア50%を独占する日本の勝ち領域。ニアラインサーバー=AIデータ保管の中核。液冷データセンター=AI時代の必須冷却インフラ。
④ 市場・投資|市場がどう動くか
半導体市場の「動き方」を理解するための用語です。投資タイミングの判断に直結します。
シリコンサイクル
3〜4年周期の需要変動。好況期に設備投資急増・不況期に急減。AI特需でサイクルの性格が変化。「最高の決算=売り、最悪のニュース=買い」が投資の鉄則。
WFE(ウェハ前工程装置市場)・B/Bレシオ
WFE=半導体設備投資の体温計。2026年は約1,390億ドルと過去最高予測。B/Bレシオ=受注÷出荷。1.0超で市場拡大。装置メーカーへの投資タイミングを測る先行指標。
ASP(平均販売単価)・半導体サプライチェーン
ASP=チップ1個あたりの平均価格。HBMの登場でDRAMのASPが構造的に急騰。サプライチェーン=EDA→設計→装置→材料→製造→後工程→テストの分業生態系。脆弱なリンクの把握が投資の鍵。
スループット・アフターマーケット
スループット=装置の単位時間あたり処理ウェハ枚数。生産コストを直接決定。アフターマーケット=消耗品・メンテナンスの継続収益。シリコンサイクル耐性が高い安定収益源。
⑤ 地政学|国家がどう関わるか
半導体産業に対する国家の関与を理解するための用語です。M&Aの規制リスク把握に直結します。
半導体輸出規制・デュアルユース
輸出規制=先端半導体・装置の中国輸出を制限する安全保障政策。デュアルユース=民間・軍事両用技術。装置メーカーの中国向け売上を直撃。不可逆的なトレンドとして定着。
CHIPS法・経済安全保障
CHIPS法=米国の半導体産業支援法。約527億ドルの補助金でTSMC・Samsung・Micronの米国工場を支援。経済安全保障=半導体を国家戦略物資として位置づける日本の政策。
Rapidus・台湾リスク・リショアリング
Rapidus=日本の2nm国家プロジェクト。政府支援2.35兆円・2027年量産目標。台湾リスク=世界先端半導体の約90%が台湾TSMCに集中する地政学的脆弱性。リショアリング=製造の国内回帰。
⑥ 装置・材料|製造を支えるインフラ
半導体製造を支える装置・材料・部品に関する用語です。日本企業が強みを持つ領域です。
石英部品・静電チャック・フォーカスリング・チャンバーライナー
半導体製造装置チャンバー内の消耗部品群。フェローテック(Ferrotec)がワンストップで供給する日本の強み領域。先端プロセス移行でSiC化(高単価化)が進む。
SiC部品・アルミナセラミックス
SiC部品=耐プラズマ性・耐熱性に優れる先端プロセス向け高性能部品。アルミナ=汎用的な絶縁・耐熱セラミックス材料。京セラ(ファインセラミックス事業本部)・クアーズテック(CoorsTek)が主要メーカー。
シリコンウェハ・フォトレジスト・特殊ガス
ウェハ=信越化学・SUMCOが世界60%独占。フォトレジスト=JSR・東京応化・信越化学が世界70%独占。特殊ガス=関東電化工業・レゾナックが供給する「見えないインフラ」。
FOUP・検査装置・メガソニック洗浄
FOUP=ウェハを密閉搬送する容器。新規ファブ建設と連動した需要。検査装置=KLAが世界50%超独占。メガソニック洗浄=超音波でパーティクルを除去する物理洗浄技術。
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用語の理解を深めたら、以下の記事で業界全体の構造と主要企業を掴んでください。
- 半導体業界の全体構造を経営・投資視点で読む
- ファブレスとファウンドリの違い|ビジネスモデルで読む半導体産業の分業構造
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