結論:リソグラフィとは、半導体ウェハ上に回路パターンを光で転写する工程だ。使用する光の波長が短いほど微細な回路を描けるため、EUV(極端紫外線)という波長13.5nmの光を使う最先端リソグラフィが、3nm以下の先端半導体製造の鍵を握っている。この工程を支配するASMLと東京エレクトロンの2社が、現代半導体産業の咽喉部を押さえている。
リソグラフィとは何か|基本定義
リソグラフィ(Lithography)とは、半導体製造の前工程において、シリコンウェハ上に回路パターンを転写する工程だ。印刷技術の「版」に相当するフォトマスクに描かれた回路パターンを、光を使ってウェハ上のフォトレジスト(感光材料)に焼き付ける。
工程の流れは以下の通りだ。
- フォトレジスト塗布:ウェハ表面に感光材料を均一に塗布(東京エレクトロンの塗布装置が担当)
- 露光:フォトマスクを通して光を照射し、回路パターンを転写(ASMLの露光装置が担当)
- 現像:露光されたフォトレジストを現像液で溶かし、パターンを形成(東京エレクトロンの現像装置が担当)
- エッチング:パターンに従って下層の膜を削る
使用する光の波長が短いほど、より細かいパターンを描ける。現行の最先端はEUV(波長13.5nm)で、3nm・2nm世代の半導体製造に使用される。EUV露光装置はASMLが世界シェア100%を独占しており、EUV塗布・現像装置は東京エレクトロンが世界シェア100%を持つ。
リソグラフィ技術の世代進化
- KrF(フッ化クリプトン):波長248nm。90nm〜130nmプロセス
- ArF(フッ化アルゴン)液浸:波長193nm。10nm〜28nmプロセス。現在も成熟プロセスで主流
- EUV(極端紫外線):波長13.5nm。7nm以下の先端プロセスに不可欠
- High-NA EUV:次世代EUV。2nm以下に対応。1台約1,000億円
重要なのは、ArF液浸露光装置も依然として大量に使われている点だ。成熟プロセス(28nm〜90nm)向けの半導体(車載・産業用・マイコン等)はArF液浸で製造され、その市場規模は大きい。EUVだけが半導体産業ではない。
多重露光(マルチパターニング)
ArF液浸露光装置でも、同じウェハに複数回露光を繰り返す「多重露光」技術により、より微細なパターンを実現できる。ただし工程数が増えるためコストと時間がかかる。EUVはこの多重露光の回数を削減できるため、コスト・生産性で優位性がある。
投資・M&A視点からの評価
リソグラフィを投資視点で評価する際の核心は「どの世代の露光技術に投資するか」だ。EUV・High-NA EUV向けの装置・材料(フォトレジスト・マスクブランクス)は高成長市場だが、成熟プロセス向けのArF液浸市場も安定した需要がある。
M&Aの観点では、EUVプロセスに必要なフォトレジスト・マスクブランクス(フォトマスクの原板)を供給する日本企業(信越化学・AGC・HOYA等)が注目される。これらはEUV採用が広がるほど需要が構造的に増加する。
まとめ
- リソグラフィ=光で回路パターンをウェハに転写する半導体製造の核心工程
- 光の波長が短いほど微細化が可能:KrF→ArF液浸→EUV→High-NA EUVと進化
- EUV露光装置:ASMLが世界シェア100%/EUV塗布・現像装置:TELが世界シェア100%
- 成熟プロセスはArF液浸が依然主流・車載・産業向けで安定需要
- 投資評価軸:EUV関連材料(フォトレジスト・マスクブランクス)の日本企業
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