結論:Huawei(華為)が、中国市場のAIチップシェアでAscend(昇騰)がNVIDIAを上回った可能性が高いと発言したと報じられた。これは単なる販売競争の話ではなく、中国のAI半導体が「性能で追う」段階から、「国内調達の囲い込み」と「システム全体の設計」で別の土俵を作る段階へ移ったことを示す動きだ。一方、同社自身が「作れる分はすべて売れている」と述べており、勝敗を分けるのは需要ではなく供給能力である。
何が報じられたのか
TrendForceは2026年10月7日、中国メディアijiweiの報道を引用し、上海で開かれたHuawei Connectでの輪番会長Eric Xu氏の発言を伝えた。Xu氏は、Huawei側で把握できるデータに基づけば、中国市場でAscendはNVIDIAを上回った可能性が高いと述べた。ただしNVIDIAの正確なシェアは把握しにくいとも認めており、第三者の統計で裏付けられた数字ではない。本記事では「報道ベース、自己申告ベースの主張」として扱う。
製品面では、推論向けのAscend 950PRが限定的な量で提供され、学習向けの950DTを使うSuperPoDは試験中で、量産供給は2026年末から2027年初頭と報じられている。Xu氏は「作れるチップはすべて売れており、サプライチェーンの拡大がもっと速ければ」と語ったとされる。海外向けには一部の国へ少量を出荷したのみで、広範な展開は予定せず中国顧客を優先する方針だ。
構造的に何が起きているのか
第一に、シェアの意味が変わっている。TrendForceは、中国が2026年に国産AIチップへの支援を強化し、ハイエンドAIチップ市場の約9割を国産品が占める見通しだと補足している。輸出規制の下では、NVIDIAの性能が高くても「買えない・届かない」状況が生じる。実際、NVIDIA H200の対中輸出が許可されても届かない問題では、ボトルネックが規制そのものから別の工程へ移っていることを整理した。Ascendのシェア上昇は、性能比較の結果というより、調達可能性の差が反映された面が大きいと考えられる。
第二に、ボトルネックは設計ではなく製造にある。Huaweiは微細化装置の制約を抱えており、LogicFoldingチップがEUV規制を迂回する試みは、露光技術に頼らず構造面で性能を稼ぐ発想を示している。さらに、中国メモリではCXMTのNAND参入とYMTCのDRAM逆侵攻が進み、メモリ側でも国産化の層が厚くなりつつある。ロジック、メモリ、装置の各層で「欠けている部分」を埋める競争になっている。
NPO対CPO──光インターコネクトの選択
もう一つの論点が光接続だ。HuaweiのHi-ONEモジュールはNPO(Near-Packaged Optics)を採用し、7.2Tbpsの帯域に対応する。光エンジンはメインチップから約5cm離れた位置にあり、光源もモジュールに統合されている。Xu氏は、エンジニアリング、コスト、保守性、歩留まりの面でNPOがかなり長期にわたり有力な選択肢だと述べた。CPO(Co-Packaged Optics)の接続距離が約5mmであるのに対し、NPOは銅配線が約5cm必要になるものの、コストを約4割削減できると報じられている。
この選択の本質は保守性にある。光エンジンが故障しても、高価なAIチップごと廃棄せずに交換できる。歩留まりに制約のある国内製造では、チップとパッケージを一体化するCPOより、リスクを分離できるNPOの方が合理的になりうる。これは、TSMCのCoWoS-Lが2028年までAIチップ包装の主流になるという先端パッケージ主導の流れとは異なる、もう一つの設計思想だ。
単体チップから「システム」競争へ
HuaweiはPeeriumという演算アーキテクチャとUnifiedBus(UB)相互接続を組み合わせ、SuperPoDやクラスタ単位でモデルFLOPS利用率(MFU)を高められると説明している。単体チップの性能差を、数を束ねる設計で補う戦略である。ソフトウェア面でも、ReutersはDeepSeekとHuaweiがAscend向けのオープンソース基盤を開発し、Ascend 950を128個搭載したSuperNodeで計算と通信を共同最適化したと伝えている。
同様の「システム側での差別化」は中国だけの現象ではない。Broadcomのカスタムシリコンが2028年に2,300億ドル市場へという見立てが示すように、世界的にもAI半導体の価値は単体チップから、相互接続・パッケージ・ソフトウェアを含む全体設計へ移っている。ただしHuaweiの場合、これを制約下で実現しなければならない点が異なる。
今後の注目点
注目すべきは三点ある。①950DT SuperPoDが2026年末〜2027年初頭に実際どの規模で量産されるか、②自己申告のシェアが第三者調査で裏付けられるか、③NPOが業界標準の一つになるかである。Xu氏はグローバルのAIチップ需給が2029年頃に概ね回復すると見ているが、中国はそれより長引く可能性があるとも述べた。需要が供給を上回る状態は当面続く見通しで、2027年のHBM価格が前年比121%上昇するという予測とも整合する。AIインフラの制約は、チップ設計力から、メモリ・パッケージ・製造能力へと明確に移っている。
出典:TrendForce「Huawei Says Ascend Market Share Has Surpassed NVIDIA in China, Backs NPO over CPO for Optical Interconnects」(2026年10月7日、ijiwei報道の引用)/Reuters(2026年9月30日、TrendForce経由)。いずれも報道ベースの内容で、シェアの数値はHuawei側の発言に基づく。
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