結論:Broadcomが9月2日に発表した2026年度第3四半期決算で、AI半導体売上は前年同期比221%増の167億ドルとなり、第4四半期はさらに236%増の217億ドルに達する見通しが示された。CEOのホック・タン氏は、同社のカスタムAIチップ(XPU)事業が2022年度の26億ドルから2028年度には2,300億ドル規模に拡大するとの長期見通しを提示している。これと軌を一にして、Broadcomが製造を担うOpenAI独自設計チップ「Jalapeño」のベンチマーク結果が明らかになり、NVIDIAの主力推論GPU「GB200」を上回る性能を主張する分析も出てきた。生成AIチップの主導権が、NVIDIAの汎用GPUから、ハイパースケーラー自身が設計しBroadcomなどが実装を担う「カスタムASIC」へと移りつつある構造が、数字の上でも見え始めている。
Broadcomの決算が示す「もう一つの半導体企業」の実力
Broadcomの2026年度第3四半期(6〜8月)の総売上は296億ドルで前年同期比86%増、このうち半導体ソリューション部門は208億ドルと全体の70%を占め、前年同期比127%増加した。中でもAI関連売上は167億ドルに達し、内訳はAIコンピュート(XPU)が122億ドル、AIネットワーキングが45億ドルとなっている。第4四半期のAI半導体売上ガイダンスは217億ドル(前年同期比236%増)で、通期の売上ガイダンスも348億ドルと加速が続く見通しだ。タン氏は決算説明会で、Google・Anthropic・OpenAI・Meta向けの受注が数年分積み上がっていることを明らかにし、Anthropicは2027年に最大顧客の一つとなり2028年には10ギガワット規模のTPU容量を展開する計画であるれとを説明した。Meta Platformsも2028会計年度末までに3ギガワットの自社チップ容量を確保するとしている。
OpenAIの「脱NVIDIA一本足」戦略とJalapeñoの実力
OpenAIは2026年6月、Broadcomと共同開発した推論専用チップ「Jalapeño」を発表していた。設計はOpenAIが主導し、シリコン実装とTomahawk系ネットワーキングをBroadcomが、基板・ラックレベルの統合をCelesticaが担う体制で、設計から製造テープアウトまでわずか9カ月というスピードも話題になった。8月下旬に半導体分析会社SemiAnalysisが公開したベンチマークでは、GPT-OSS系モデルの推論スループットにおいてJalapeñoがNVIDIAのGB200の約2倍の性能を示したと報じられ、DeepSeek R1では1ユーザーあたり毎秒700トークン、Kimi-K2.5では毎秒1,400トークン前後という高い生成速度も記録されたという。総保有コスト(TCO)の面でも、次世代GPU「Vera Rubin NVL72」に匹敵する効率を、投機的デコーディングという高速化技術を使わずに達成しているとの指摘があり、これを併用すればさらにコスト優位が広がる可能性がある。OpenAIはこれまでもSamsungへの製造委託検討を巡る報道とその2日後の否定など、特定のベンダーに供給網を一本化しない姿勢を繰り返し示してきたが、Jalapeñoの実力が明らかになったことは、その分散戦略が「性能面でも通用し始めた」ことを裏付ける材料といえる。
なぜカスタムASICがGPUに迫れるのか
汎用GPUは、あらゆるモデル・用途に対応できる柔軟性と引き換えに、推論に特化した処理では回路資源に無駄を抱えやすい。これに対しカスタムASICは、自社が実際に動かすモデルの構造、すなわちトークン生成のパターンやメモリアクセスの癖に合わせて回路を設計できるため、同じ電力・同じダイ面積でもより高いスループットを引き出しやすい構造的な優位がある。加えて、HBM4の量産能力の拡大や、TSMCが求める「X線で見える設計」のような先端パッケージング品質の底上げによって、NVIDIA向けと同水準の実装環境がカスタムチップ陣営にも利用可能になりつつある。NVIDIA自身がHBM4の積層構成を12段から8段へ分散させ始めていることも、供給制約への対応と同時に、競合ASIC陣営が同じ土俵に立ちつつある証左と読める。Broadcom・Google・Meta・Amazonが持つ内製XPUの拡大投資は、この技術的なキャッチアップを前提にした判断だと言える。
!– wp:heading –>日本の半導体産業・M&Aへの示唆
この構造変化は#NVIDIAの需要そのものが縮小するという単純な話ではない。むしろAIチップの設計・実装・先端パッケージング・メモリという各レイヤーで、これまでNVIDIA一極集中だった発注が、Broadcom・Marvell・TSMC・HBMメーカーなど複数のプレイヤーに分散していく展開だと捉えるべきだろう。日本の半導体商社・部材メーカー・装置メーカーにとっては、NVIDIA向けサプライチェーンだけを見ていればよかった時代が終わりつつあり、Broadcom・Google・Meta・OpenAIといったカスタムASIC陣営のサプライチェーンにも接点を持てるかどうかが、今後数年の受注構成やM&A・提携戦略の分岐点になりうる。
出典:Broadcom Inc.「2026年度第3四半期決算発表」(2026年9月2日)、OpenAI公式発表「OpenAI and Broadcom unveil LLM-optimized inference chip」(2026年6月24日)、SemiAnalysis「OpenAI Jalapeño: Better Than Nvidia」(2026年8月25日)、24/7 Wall St.記事(2026年9月23日)等の報道に基づく。ベンチマーク数値は各社発表時点のものであり、実際の性能・コスト条件は環境により変動しうる点にご留意ください。本記事は報道ベースの分析であり、投資助言を目的としたものではありません。
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