結論:TrendForceは2026年9月30日、4Q26(10〜12月)の汎用DRAM契約価格が前期比10〜15%上昇するとの見通しを示しました。注目すべきは上昇率そのものより、同じDRAMでも「AIサーバー向け」と「PC・スマホなど消費者向け」で値上がりの理由と勢いが分かれてきた点です。供給側が先端プロセスの生産能力をサーバー向けに優先配分しているため、需要の弱い分野にも値上がりが波及する、という構造が見えてきます。
TrendForceの4Q26見通しの中身
TrendForceによると、4Q26の汎用DRAM契約価格は前期比10〜15%の上昇です。同じ発表では、NAND型フラッシュ全体も15〜20%の上昇と予測されています。NANDについては、TrendForceの4Q26 NAND契約価格予測の記事で整理したので、本稿ではDRAM側の構造に絞ります。
価格上昇を支える要因としてTrendForceが挙げているのは、AIサーバーの拡張、エージェント型AIの実運用の広がり、エンタープライズSSDのインフラ整備です。逆に、下押し要因は消費者向けの需要の弱さ、スマートフォン在庫の積み上がり、部品コストの上昇とされています。つまり市場全体が一様に強いのではなく、強い需要と弱い需要が同居したまま価格だけが上がる局面だと読めます。
用途別に見ると、値上がりの「理由」が違う
TrendForceの用途別の見立てを整理すると、次のようになります。サーバー向けDRAMは引き続き供給不足で、ただし一部の供給者は長期契約(LTA)の存在により、値上がり幅が市場平均を下回るとされています。PC向けDRAMは、エンドマーケットの販売が弱いにもかかわらず、PCメーカー(OEM)が積極的に調達していることが価格を支えています。モバイル向けは、前の四半期に大きく上がった反動で上昇ペースが鈍化します。一方、グラフィックス向けのGDDR7は、AIチップ需要を背景に上昇基調が続きます。消費者向けDRAMは上昇ペースが緩やかです。
ここで重要なのは、PC向けの価格を支えているのが「最終需要」ではなく「OEMの先回り調達」だという点です。売れていないのに買い増すのは、将来さらに値上がりする、あるいは調達できなくなるという不安があるからでしょう。需要の裏付けが弱いまま価格が上がっている部分は、局面が変わると反落もしやすい部分でもあります。
背景にあるのは「先端能力のサーバー優先配分」
TrendForceは、汎用DRAMの供給不足が続く主因として、先端プロセスの生産能力が高性能サーバー向けに優先されていることを挙げています。DRAMメーカーにとって、同じウェハーから得られる利益はAI向けのほうが大きく、設備投資も生産能力もそちらに寄せるのは合理的です。結果として、消費者向けに回る供給が細り、需要が弱くても価格が下がりにくくなります。
これはHBMとも地続きの話です。TrendForceが2026年6月に公表した見通しでは、DRAMのウェハー投入量に占めるHBMの比率は、2025年末の約18%から2026年に22%、2027年に30%へ上がるとされています。ビット供給ベースでは8%、9%、13%という推移です。ウェハーの使い方が大きく変わるのに、ビット数の増え方は小さい。これがHBMによる汎用DRAMの「食い合い」であり、汎用品の需給を引き締める仕組みです。2027年のHBM価格見通しについては、TrendForceの2027年HBM価格予測の記事も参照してください。
メーカー側の動きと今後の注目点
価格の追い風は、すでにメーカーの業績にも表れています。Micronは直近の決算で売上542億ドル・粗利益率87%を発表しており、詳細はMicron FQ4決算の解説で扱いました。市場シェアの面でも、MicronのDRAMシェアがSK hynixに1ポイント差まで接近と報じられています。さらに、Nanya・Winbondの9月売上が過去最高と報じられたことは、逼迫が先端品だけでなくレガシー・特殊品にも広がっていることを示します。HBMの競争軸の変化については、MicronのカスタムHBMにTSMC 3nm級を採用という報道が参考になります。
今後の注目点は三つあります。第一に、サーバー向けLTAが市場平均より低い値上がり幅にとどまるなら、大口顧客の価格交渉力がどこまで続くかです。第二に、PC・スマホの最終需要が弱いまま、OEMの在庫が積み上がらないかです。第三に、2027年に向けたHBM4の供給交渉が、汎用DRAMの生産配分をさらに動かすかどうかです。いずれも、製造・投資・M&Aの判断では「価格水準」より「どの用途に能力が配分されているか」を見る必要があることを示しています。なお、上記の予測はあくまでTrendForceの見通しであり、実際の契約価格は供給者ごと・顧客ごとに異なります。
出典:TrendForce「AI Server Demand Sustains Memory Contract Price Increases in 4Q26, While Consumer-Side Pressure Persists」(2026年9月30日)/TrendForce HBM・DRAM需給見通し(2026年6月2日、Tiger Brokers・iconnect007の転載報道を参照)
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