結論:TrendForceの報道によると、2026年第4四半期(4Q26)の汎用DRAM契約価格は前期比で約20%上昇する見通しです。ただし上昇率は2Q26の約80%、3Q26の約40%から明確に減速しており、「値上がりの勢い」から「高止まりの水準」へ局面が移りつつあります。減速の背景には、比較基準の上昇、最終需要の購買力低下、そして長期契約(LTA)による価格上限の効き始めがあり、価格決定の主導権の構造が変わり始めています。
上昇率は80%→40%→20%へ。何が変わったのか
TrendForce Newsは2026年10月20日、Commercial Times、MoneyToday、Chosun Bizなどの報道を引用し、4Q26のDRAM価格が約20%上昇すると伝えました。2Q26が約80%、3Q26が約40%であったため、上昇率はおおむね半分ずつに縮小しています。価格は依然として上がっていますが、「上がり方」が鈍っている点が重要です。
当サイトでは先に、4Q26の汎用DRAM契約価格は前期比10〜15%上昇とするTrendForceの予測を取り上げました。今回の約20%という数字はそれより高い水準ですが、いずれも2Q26・3Q26の伸びを大きく下回るという点では一致しており、「上昇は続くが加速はしない」という見方が固まりつつあります。
減速の3要因:比較基準・購買力・長期契約の上限
報道ベースでは、減速の理由として3点が挙げられています。第一に、価格がすでに高い水準にあるため、同じ金額の値上げでも上昇率が小さく見える「比較基準」の問題です。第二に、スマートフォンやPCなどの最終市場で購買力が弱まっていることです。第三に、長期契約(LTA)に組み込まれた価格上限が徐々に効き始めていることです。
構造的に重要なのは第三点です。AI向けのサーバー需要が強い局面では、買い手は供給を確保するために長期契約へ傾きます。その契約に上限が設けられると、スポット市場が逼迫しても契約価格は青天井に上がりません。実際、TrendForceのスポット価格レポートでは、DDR5は供給が逼迫して売り手が売り渋り、買い手が目標価格を引き上げても割当を確保できない状況と報じられています。一方、DDR4の主流品(1Gx8 3200MT/s)の現物価格は10月20日時点で0.84%上昇の46.357ドルと小幅な動きにとどまり、NAND(512Gb TLCウエハー)は10月19日時点で1.28%下落の18.592ドルでした。同じ「メモリ」でも、品目ごとに需給の温度差が開いています。
HBMとNVIDIAの設計判断がDRAM全体の需給を左右する
Commercial Timesによれば、仮にNVIDIAがRubin UltraでHBMを12段積みから8段積みに切り替え、1GPUあたりのスタック数とDRAM層あたりの容量を据え置いた場合、1GPUあたりのHBM容量は約33%減ります。同じDRAMダイの供給量で、理論上は約50%多いGPUを賄える計算です。これは現時点では仮定の試算であり、確定した計画ではありません。
ただしTrendForceは、8段積みも12段積みも1つのベースダイを必要とするため、容量が小さい8段積みはGb当たりのコストが割高になり、2027年には12段積みより10〜20%高くなると見ています。なお、2027年のHBM平均単価は前年比121%上昇とするTrendForceの予測とあわせて読むと、HBMは「数量」だけでなく「積み段数の設計」によっても価格と供給が動く市場であることがわかります。
中国勢(CXMT・YMTC)は価格の抑止力になるのか
もう一つの変数が中国メーカーです。CXMTは次世代の4F²アーキテクチャの進展を発表しました。Commercial Timesによれば、主流の6F²に比べてメモリセル面積を約33%縮小できる可能性があります。ただし、セルが小さくなっても、ウエハー当たりの使えるビット数が比例して増えるとは限りません。歩留まり、リーク電流、データ保持などの課題が残り、本格的な商用化は2028年以降との見方が一般的です。MoneyTodayによると、この発表がDRAMのスポット価格に大きな影響を与えた形跡はなく、価格は上昇を続けています。
Chosun Bizは、AppleやTeslaがメモリコストの上昇を受けてCXMTやYMTCの採用を検討する可能性に触れています。ただし、アナリストは価格競争力、供給量、販売できる市場の制約から、短期的な価格への圧力は限定的とみています。これは買い手にとっては「交渉材料」として機能しても、実際の調達先の切り替えまでには距離があるということです。なお、中国でのNAND増強をめぐっては、Samsung、SK hynixが中国工場のNAND高層化を進めると報じられています。背景はMicronの決算で示された、メモリが高収益を生む構造と、MicronのDRAMシェアがSK hynixに迫っているという報道にもあり、上位各社が高水準の収益を維持する中で、競争は価格から技術・供給枠の確保へ移っています。
このニュースが示す構造:「値上がり」から「枠の取り合い」へ
DRAMの価格上昇が減速していても、市場が弱いわけではありません。NanyaやWinbondの9月売上が過去最高と報じられたように、需給の逼迫は旧世代品にも波及しており、TSMCの7〜9月期売上が過去最高となったことも、AI需要が川上の製造能力を押し上げていることを示しています。
構造的に起きているのは、価格がスポットで決まる市場から、長期契約と供給枠で決まる市場への移行です。価格の上昇率は鈍っても、供給が確保できるかどうかが競争力を左右します。メモリを購入する側は価格だけでなく、契約の上限条項、供給の優先順位、複数の調達先の確保が焦点になります。投資や事業参入を検討する側にとっては、市況の「上昇率」ではなく、契約構造の変化とAI向け需要の持続性を見る必要があります。以上の数値は、TrendForceが各報道を引用して伝えた内容であり、報道ベースの情報を含む点にご留意ください。
出典:TrendForce News「DRAM Prices Seen Rising 20% QoQ in 4Q26 Despite Slower Gains」(2026年10月20日、Commercial Times/MoneyToday/Chosun Bizを引用)、TrendForce「Memory Spot Price Update」(2026年10月21日)、TrendForce News「Samsung, SK hynix Reportedly Push China NAND Upgrades Beyond 200 Layers」(2026年10月21日、Reuters等を引用)
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