【2026年10月】Samsung、車載AP「Exynos Auto」の次世代開発を中止と報道──System LSIが「稼げる領域」に絞り込む構造

半導体最新ニュース|統一サムネイルテンプレート

結論:Samsungが車載向けアプリケーションプロセッサ「Exynos Auto」の次世代品の開発を打ち切ったと、韓国の文化日報(Munhwa Ilbo)が報じた。これは「車載から撤退」というより、System LSI部門が限られた設計リソースを、利益が見込めるスマートフォン向けSoCとイメージセンサーに集中させる選択と読むのが妥当だ。ただしSamsung自身はまだ正式に認めておらず、現時点では報道ベースの情報である。

目次

何が報じられたのか

SamMobileは2026年10月8日、文化日報の報道として「Samsungは今後のExynos Autoシリーズの開発を中止することを正式に決めた」と伝えた。XenoSpectrumやTrendForce Newsも同9日に後追いしている。ただし伝えられている範囲は限定的で、Hyundai(2023年に次世代インフォテインメント向けとしてExynos Auto V920の採用が発表)とBMW(2025年に契約と報道)向けの既存の生産・供給は履行する見通しとされる。つまり即時の供給停止ではなく、「後継品を作らない」という話である。

一方で、Samsungからの公式発表は確認されていない。SamMobileは、同様の噂が昨年にも出ていたと指摘している。本稿では、以下すべてを報道ベースの情報として扱う。

なぜ車載APは「割に合わない」のか

報道によれば、Exynos Autoは1チップあたりの開発費が1,000億ウォン超(約7,500万ドル)にのぼる一方、供給価格は1個20〜40ドル程度とされる。単純試算(他のコストを無視)では、開発費だけを回収するのに約190万〜380万個の出荷が必要になる計算だ。スマートフォン用SoCなら数千万個規模で売れるが、車載は車種ごとの採用で、量が積み上がるまで年単位の時間がかかる。

加えて、車載チップには車載安全規格(ASIL)や長期の耐久性・供給保証など、スマホ向けより厳しい要件が課される。コックピット向けではQualcommのSnapdragon Cockpitが圧倒的な存在感を持ち、後発が価格と量で巻き返すのは難しい。Samsungは2018年から車載に投資してきたが、規模の経済が働きにくい市場構造が、今回の判断の背景にあると考えられる。

System LSIは「稼げる領域」に寄せる

報道では、System LSI部門は今後、スマートフォン向けAPとイメージセンサーに開発資源を振り向けるとされる。Samsungの半導体事業はメモリ主導で大きく伸びており、7〜9月期の暫定営業利益は約107兆ウォンと報じられた。しかしメモリ以外の事業は依然として苦戦が指摘されている。ファウンドリも2026年の赤字が42%縮小する見通しとされるものの、黒字化の途上にある。

設計側の再配分は、ファウンドリ戦略とも連動する。報道ではApple向けイメージセンサーを米テキサス州オースティンの工場で量産開始したとされる(こちらも未確認部分がある)。ファウンドリの稼働率を高め、顧客を確保するには、自社設計の採算性が高い製品に集中する方が合理的だ。さらにスマホ向けでは、2026年下期に第2世代2nmの量産を計画しており、Exynosを自社先端プロセスの旗艦ショーケースとして使いたい意図も透ける。

車載半導体の勢力図への影響

車載コックピットでは、SamsungがExynos Autoの新世代を出さないなら、競争環境はQualcommなど既存勢力の優位がさらに強まる可能性がある。傘下のHARMANは車載インフォテインメントを手がけるが、2025年にQualcommとの生成AI車載システムでの協業を発表済みで、HARMANの事業がExynos Autoに依存していないとの見方もある。ただし、今回の決定とHARMAN・Qualcommの協業の因果関係は確認されていない。

自動車メーカー側にとっては、チップの調達先が減ることはリスクでもある。ソフトウェア定義車(SDV)では、チップの寿命が10年超に及ぶこともあり、後継品の不在はHyundaiやBMWの中長期ロードマップに影響しうる。もっとも、両社向けの供給は継続されると報じられており、影響が顕在化するのは次世代車種の選定時だろう。

この動きは、半導体各社が「何でも作る総合路線」から、Qualcommがスマホ向けSnapdragonの新型で製造委託先を絞り込んだとされる動きや、Intelが14Aで外部顧客の生産枠確保を進める動きと同様に、「利益の出る領域に絞る」方向へ進んでいる一例でもある。AI向けの需要拡大で投資余力が奪い合いになる中、中国ではHuaweiのAscendがAIチップ市場で存在感を高めるなど、各地で資源配分の取捨選択が構造変化を生んでいる。

今後の注目点

確認すべき点は三つある。第一に、Samsungが公式にどう説明するか。第二に、V920以降の後継品が本当に存在しないのか、あるいは縮小版として残るのか。第三に、顧客であるHyundaiやBMWが次世代の調達先をどう動かすかだ。M&Aの視点では、System LSIの車載部門が、他社へのIP・人材の売却や提携の対象になる可能性も考えられるが、現時点では報道に含まれておらず、推測の域を出ない。

出典:SamMobile「Samsung may stop making Exynos chips for cars」(2026年10月8日、文化日報報道の引用)/XenoSpectrum(2026年10月9日)/TrendForce News(2026年10月9日)。いずれも文化日報の報道に基づく内容であり、Samsungの正式発表は確認されていません。


半導体業界のM&A・参入・投資をご検討の方へ

本記事のような業界構造の分析をふまえ、半導体業界へのM&A・新規参入・企業分析を実務目線でご支援しています。まずはお気軽にご相談ください。

🏢 お問い合わせ:テックメディックス総研株式会社

◆ M&A・投資視点のより深い企業分析はnoteで公開しています
→ 半導体業界動向マガジン(高野聖義)

◆ 半導体業界へのM&A・参入・コンサルティングをご検討の方
→ 初回相談無料|テックメディックス総研株式会社

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次