結論:Lam Researchの7〜9月期(2026年度第1四半期)は、売上・粗利益率・営業利益率がいずれも過去最高水準となりましたが、株価は発表翌日に約10%下落したと報じられています。市場が見ているのは「今期の好決算」ではなく、「2027年の需要は強いが、供給制約と中国比率の急低下で伸びが鈍る」という構造の変化です。
決算の中身:売上82.2億ドル、粗利益率は過去最高
報道によると、Lamの売上高は82.2億ドルで前年比54%増、前四半期比22%増でした。非GAAPベースのEPSは2.20ドル、粗利益率は52.4%、営業利益率は40.2%とされ(報道ベース。媒体により営業利益率の表現に差があります)、フリーキャッシュフローも32.4億ドルと過去最高を記録しました。市場予想(売上約81.3億ドル)を上回ったものの、EPSの上振れ幅は直近4四半期で最も小さい水準にとどまっています。
12〜3月期のガイダンスは売上86億ドル(±4億ドル)、EPS 2.33ドル(±0.15ドル)で、コンセンサスの85.4億ドルをやや上回ります。ただし同社CFOは、近い将来のサプライチェーン制約が売上見通しを抑えていると説明したと伝えられており、「需要不足」ではなく「作れない」ことが成長の天井になっている点が重要です。
2027年WFEは2,000億ドル超:成長の主役はDRAM
Lamは2026年のウェハファブ装置(WFE)市場を1,500億ドル台半ば、2027年を2,000億ドル超と見ていると報じられています。2027年の増加分の主役はDRAMです。HBMや先端DRAMへの投資が装置需要を押し上げる構図は、TrendForceが予測した2027年のHBM平均単価121%上昇とも整合します。メモリメーカーの利益が膨らむほど、その利益が装置投資へ回る循環が強まっています。
同様の見方は装置業界全体で広がっています。ASMLが2026年売上見通しを3度目に上方修正した件では、2027〜28年の供給が需要に届かない構造が指摘されました。装置メーカー各社が揃って「供給側の制約」を語り始めたことは、WFE市場が価格より数量・納期で決まる局面に入ったことを示します。
中国比率35%と「その後の急低下」という構造リスク
今回の決算で最も市場の警戒を呼んだのが中国です。中国向けは売上の35%と、前四半期の26%から急上昇しました。一方でCFOは12月四半期に「大幅に低下する」との見通しを示したと報じられています。駆け込み的な出荷が一巡し、規制や顧客側の投資タイミングの影響で反動が出る可能性があります。
つまり今期の高成長には、中国向けの一時的な上乗せが含まれていた可能性があります。株価下落を受け、BofAは目標株価を385ドルから345ドルに、Needhamは390ドルから290ドルに引き下げたと伝えられています。好決算でも売られた理由は、利益水準ではなく「成長の質」への疑問にあります。
米国投資と装置各社の拠点戦略
需要が強い一方で、装置メーカーは地理的な分散も進めています。SEMIは米州の300mm装置投資が2029年に406億ドルへ倍増すると予測しており、Applied Materialsは50億ドルの研究拠点「EPIC Center」を開設しました。Lamも先端パッケージング市場が2026年に70%超成長すると見込み、Aether(ドライレジスト)の長期売上見通しを2030年までに約25億ドルへ引き上げたと報じられています。
ここで注目すべきは、装置の需要地が「中国中心」から「米国・韓国・台湾の先端投資」へ移ることです。TSMCの7〜9月期売上が過去最高となったように、先端ロジックとメモリの設備投資が当面の装置需要を支えます。成熟ノード側でも、8インチ供給の逼迫によるファウンドリ値上げが示すように、供給制約が価格を押し上げる動きが続いています。
構造的に何が起きているのか
今回のLam決算が示すのは、装置業界の収益構造が「需要を取り込む」段階から「供給能力と地域構成で成長が制約される」段階に移りつつあるという点です。収益性は過去最高でも、成長率はサプライチェーンと中国比率の正常化に左右されます。投資家やM&Aの観点では、装置メーカー単体の業績よりも、部材・サブシステム供給網の確保力や米国拠点の構築スピードが企業価値を分ける要素になりそうです。
なお、数値は決算発表に関する報道・分析記事に基づくもので、一部の指標(営業利益率など)は媒体により表現が異なります。正確な数値はLam Research公式の決算資料でご確認ください。
今後の注目点は三つあります。第一に、12月四半期で中国比率がどこまで下がるか。第二に、供給制約が解消される時期と、それに伴う納期の正常化。第三に、2027年のDRAM投資が計画通り実行されるかどうかです。これらが揃えば2027年の2,000億ドル超というWFE見通しは現実味を帯びますが、一つでも崩れれば、今回の株価反応は「早すぎる織り込み」ではなく妥当な警戒だったと評価されることになります。
出典:Investing.com「Lam Research earnings analysis」(2026年10月22日)、TradingKey「Lam Research Stock Forecast」(2026年10月22日)。いずれも2026年10月21日発表のLam Research 2026年度第1四半期決算に関する報道ベースの情報。
半導体業界のM&A・参入・投資をご検討の方へ
本記事のような業界構造の分析をふまえ、半導体業界へのM&A・新規参入・企業分析を実務目線でご支援しています。まずはお気軽にご相談ください。
🏢 お問い合わせ:テックメディックス総研株式会社
◆ M&A・投資視点のより深い企業分析はnoteで公開しています
→ 半導体業界動向マガジン(高野聖義)
◆ 半導体業界へのM&A・参入・コンサルティングをご検討の方
→ 初回相談無料|テックメディックス総研株式会社
