【2026年10月】TrendForce、HBMは「8層が2027年後半に主流」と報道──ハイブリッドボンディングが後退し、競争軸が「接合技術」から「規格と歩留まり」へ移る構造

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結論:TrendForceは10月21日付のDRAM市場速報で、ハイブリッドボンディングは「DRAMの長期トレンド」になるとしつつ、HBMでは積層数を抑える方向への動きが出ており、16層品の量産開始は後ろ倒しになる、との見方を示した。同社は8層HBMが2027年後半に主流になるとも指摘している(報道ベース)。HBMの競争軸は「どこまで高く積めるか」から、「規格・歩留まり・コストの制約の中で何を量産できるか」へ移りつつある、というのが本稿の見立てだ。

目次

何が報じられたのか:ハイブリッドボンディングは「いつか来る技術」に

ハイブリッドボンディングは、DRAMダイ同士の銅配線を、はんだバンプを介さずに直接接合する技術だ。パッケージを薄くでき、放熱や電力効率にも有利とされる。当初はHBM4から採用されるとの期待もあったが、TrendForceが7月に伝えた韓国メディアの報道では、SamsungもSK hynixも従来のTCボンディング(熱圧着)を続けており、最も早い採用は16層のHBM4Eになりそうだという。さらに「必要性が差し迫っていない」ため、それ以降にずれ込む可能性を指摘する見方もある。

今回の速報は、この流れを市場全体の見通しとして裏づけた形だ。TrendForceによれば、ハイブリッドボンディングは微細化と帯域拡大の要請から長期的にDRAMへ広がるが、時期は歩留まりとコスト次第である。一方、HBMは層数の少ない構成へ向かい、16層の量産は遅れ、8層が2027年後半の主流になるという。なお速報の詳細は有料レポートで、本稿はウェブ上に公開された要旨に基づく。

なぜ16層は遅れるのか:規格の緩和と顧客需要

背景の一つは、業界標準の緩和である。報道によれば、HBMのパッケージ高さ上限はHBM3Eまでの720µmからHBM4で775µmに引き上げられた。さらにHBM4E以降では約900µmへの緩和がJEDECで検討されていると伝えられている(未確認情報)。高さに余裕ができれば、DRAMウェハを極限まで薄くする必要も、ダイ間隔を詰め切る必要も薄れ、既存のTCボンディングで積層数を稼げる。

もう一つは需要側の事情だ。報道では、NVIDIAなど主要顧客が16層を強く求めている状況ではなく、HBM4Eでも12層が主流との見方が示されている。加えて、SamsungのHeat Path BlockやSK hynixのiHBMなど、放熱構造で熱問題に対処する案も試験されているとされ、ハイブリッドボンディングの熱面での利点を急いで取りに行く動機が弱まっている。SK hynixがHBM4Eを公開したとの報道が示すように、各社は次世代品の開発自体は進めているが、「新工程に一気に飛ぶ」より「既存工程を延命する」選択が合理的になっている。

経済性の問題も大きい。Tom’s Hardwareは、HBM4のパッドピッチ約10µmの段階ではハイブリッドボンディングは採算に合いにくいとする見方を紹介している。一方、ロジック側ではTSMCのSoICやIntelのFoveros Directがすでに量産に入っており、技術が未成熟だから遅れているわけではない。メモリ特有の「枚数が多く、1枚の不良がスタック全体に響く」という歩留まり構造が、導入のハードルを上げている。

装置・サプライチェーンへの影響

この動きは装置メーカーの勢力図にも影響する。TCボンダーで強いとされる韓国のHanmi Semiconductorには、ダイ面積を広げて積層を続けるTC路線が追い風になると報じられている。一方、ハイブリッドボンダーで先行するオランダのBESI、同社と協業するApplied Materials、Hanwha Semitechなどにとっては、HBM向けの本格需要の立ち上がりが後ろにずれる可能性がある。ただしロジック向けのハイブリッドボンディング需要は堅調で、TSMCのSoIC能力は前年比でほぼ倍増するとTrendForceは推計している。

メモリ市況の面では、HBMの層数が抑えられれば、DRAMウェハの消費効率や歩留まりの面で供給のひっ迫が続きやすい。同じ速報はPC向けDRAMの供給が来年縮小する見通しや、第4四半期の契約価格の値上げ幅拡大も伝えており、4Q26のDRAM契約価格の上昇や、2027年のHBM平均価格に関するTrendForceの見通しとも整合する。SK hynixの利益構造が数量から価格とHBM契約へ移っている点を踏まえると、供給側が「技術的に無理をしない」ことは、価格の安定という形で収益に跳ね返る可能性がある。

構造的に何が起きているか

整理すると、HBMの進化は「積層数の拡大競争」から「規格内で歩留まりを最大化する競争」に重心が移りつつある。規格が緩み、顧客が12層で満足し、放熱の代替策もあるなら、最先端の接合技術を前倒しする理由は乏しい。これは技術の停滞ではなく、投資対効果を見極めた合理的な順序づけと言える。

ただし、この均衡は永続しない。HBM5の20層級や、I/O数の急増で帯域要求が跳ね上がる局面では、ハイブリッドボンディングが再び必要になるとの見方が根強い。SK hynixの幹部も、20層以上では必須になるとの趣旨の発言をしていると報じられている。つまり論点は「やるかやらないか」ではなく「いつ必要になるか」であり、その時期を左右するのが、NVIDIAの要求仕様、JEDECの規格、そしてSamsungやTSMCを含むカスタムHBMの動きや各社のAIアクセラレータ設計である。

日本企業や投資家にとっての示唆は二つある。第一に、HBM関連の装置・材料の需要は「次世代技術の登場時期」に敏感なので、採用時期の後ろ倒しは受注タイミングの見直し材料になる。第二に、TCボンダーや検査装置のような「現行工程の延命」を支える領域には、当面の追い風が続く可能性がある。なお、本稿の内容は多くが報道ベースであり、各社の公式発表で確認されたものではない点には留意されたい。AIの需要側でもTSMCの7〜9月期の過去最高売上が示すように勢いは強く、供給側の技術選択が収益と価格に与える影響は今後さらに大きくなるだろう。

【出典】TrendForce「DRAM Market Bulletin – Oct. 21, 2026」(2026年10月21日)/TrendForce News「Samsung, SK hynix Reportedly Reconsider Hybrid Bonding Timeline…」(2026年7月7日)/TrendForce News「JEDEC Reportedly Plans to Relax HBM Height Specs to 900µm…」(2026年4月1日)/Tom’s Hardware「The current state of Hybrid Bonding in 2026」(2026年9月2日)


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