結論:HBM4で初めて、メモリメーカーは「ロジックの製造ルート」の選択を迫られている。積層DRAMの最下段に置かれる「ベースダイ(logic base die)」が、従来のDRAMプロセスから先端ロジックプロセスへ移るためだ。2026年7月10日のDIGITIMES報道によれば、SKハイニックス・サムスン・マイクロンの三社は、このベースダイの作り方をめぐって戦略が真っ二つに割れた。これは単なる工程の違いではなく、メモリ産業がファウンドリ産業へ飲み込まれていく構造転換の入り口である。
HBM4で何が変わったのか——「ベースダイ」がロジックの戦場になった
HBMは複数のDRAMチップを縦に積み、最下段のベースダイがGPUとの入出力やテスト機能を束ねる。HBM3世代までは、このベースダイもDRAMと同じメモリプロセスで作れば足りた。ところがHBM4では、データ幅が1024ビットから2048ビットへ倍増し、ベースダイに高速なロジック回路とカスタム機能を詰め込む必要が生じた。結果としてベースダイは「メモリの部品」から「小さなロジックチップ」へと性格を変え、どのファウンドリのどのプロセスで作るかが性能・歩留まり・供給を左右する新たな競争軸になった。この論理と物理の統合トレンドは、TSMCのCoWoS・2nm逼迫が供給網全体へ波及する構造とも地続きだ。
SKハイニックス:TSMC 12nmで「枯れた技術」の安定を取りに行く
首位のSKハイニックスは、HBM4のベースダイにTSMCの12nmプロセスを採用した。あえて最先端ではなく成熟プロセスを選ぶのは、量産初期のリスクを抑え、歩留まりの立ち上がりを確実にする狙いである。同社はHBM市場で6割超のシェアを握るとされ、NVIDIAの次世代Rubin向けHBM4でもUBSは約7割のシェアを予測する(報道ベース)。首位企業ほど「落とさないこと」の価値が大きく、堅実なプロセス選択がその戦略と整合する。次世代のHBM4EではTSMCの3nmを検討中とも報じられ、リードを守りながら段階的に微細化を進める構えだ。積層・接合の実装技術が勝敗を分ける点は、超低温ボンディングで先端パッケージングを攻めるコネクテックジャパンのような実装専業企業の存在感とも重なる。
サムスン:自社4nmファウンドリで垂直統合に賭ける
2位争いのサムスンは、ベースダイを自社ファウンドリの4nmプロセスで内製する道を選んだ。三社で唯一、シリコンから最終パッケージまで一貫して自前で握る「ターンキー」体制であり、微細な配線が理論上は速度と電力効率で優位に立つ。ただし4nmという先端ノードは歩留まりのハードルが高く、垂直統合は成功すれば強力な差別化、失敗すれば供給不安を招く両刃の剣となる。メモリで劣勢に回ったサムスンにとって、これは一発逆転を狙う賭けの色が濃い。高密度ロジックを内製化するほど、設計段階での熱・電磁気・構造の同時解析の重要性も増していく。
マイクロン:HBM4はコスト優先、HBM4EでTSMCへ
マイクロンはHBM4のベースダイに既存のDRAMプロセスを据え置き、コストを抑える現実路線を取った。一方で次のHBM4Eではベースロジックダイの製造をTSMCに委託し、2027年の量産を目指すとされる。まず利益率を確保し、次世代で先端ロジックへ移行するという二段構えだ。マイクロンは足元でサムスンを抜き2位に浮上したとの調査もあり、堅実な採算重視が奏功しつつある。三社三様のこの分岐は、外資系半導体各社の戦略の違いを理解するうえでも格好の教材になる。
構造的に何が起きているか——メモリとロジックの境界が溶ける
本質は、HBM4が「メモリの中にファウンドリのロジックを埋め込む製品」になったことだ。ベースダイの製造をTSMCへ出すSKハイニックスとマイクロン、自社ファウンドリで抱えるサムスン——どちらの道でも、メモリメーカーはもはや純粋なメモリ企業ではいられない。DRAMの微細化競争が限界に近づく中、付加価値の源泉はベースダイという「ロジックの薄皮」へ移り、ファウンドリの巧拙がメモリの勝敗を決める時代に入った。高速外観検査から先端パッケージまで対応する装置企業群にとっても、HBMの高積層化は新たな需要の波を意味する。今回の分岐は、AIサーバーが牽引するメモリ需要の二極化とも密接に結びついている。なお本稿の数値・時期には報道ベースの情報を含む点に留意されたい。
出典:DIGITIMES「Analysis: Samsung, SK Hynix, and Micron’s diverging approach to HBM4 base dies」(2026年7月10日)/TrendForce「SK hynix Reportedly Weighs TSMC 3nm for HBM4E Logic Dies」(2026年3月20日)/UBSのHBM4シェア予測に関する各種報道(2026年)。

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