株式会社リードテックと株式会社Next Semiconductor(ネクストセミコンダクター)は、GaN(窒化ガリウム)パワー半導体に対応したスイッチング評価装置「ダブルパルステスター」を共同開発した。Next Semiconductorが2026年9月1日に発表した。
開発した装置は、GaNパワーデバイスおよびパワーモジュールのスイッチング特性を「ダブルパルス法」によって評価するための測定装置。デバイス単体だけでなく、パワーモジュールとゲート駆動回路を組み合わせた状態での評価にも対応し、取得したスイッチング波形の解析まで行える。
SiC(炭化ケイ素)やGaNを使った次世代パワー半導体の開発が世界的に加速するなか、高速で動作するデバイスをどのように正確に評価するかが研究開発上の重要な課題になっている。今回の共同開発は、特に高出力GaNの研究開発や製品評価に必要となる測定環境を、実用的な評価装置として提供する取り組みとなる。
高出力GaNでは「作る技術」と「測る技術」の両方が重要に
パワー半導体は、電力の変換や制御を担う半導体デバイスであり、電源、産業機器、データセンター、再生可能エネルギー設備、電気自動車(EV)など幅広い分野で利用されている。
これまでパワー半導体の主流はシリコン(Si)だったが、近年はより高効率な電力変換を実現できるSiCやGaNといったワイドバンドギャップ半導体の採用が広がっている。特にGaNは高速スイッチングが可能であり、電力変換回路の小型化や高効率化につながる材料として注目されてきた。
スマートフォンやノートPC向けの小型急速充電器などでは、すでにGaNパワーデバイスの商用利用が広がっている。一方で、EVや産業システムなどに求められる650V/300A級の高出力領域では、低出力用途とは異なる技術課題が残る。
その一つが評価技術だ。GaNのように高速でスイッチングするデバイスでは、回路内部に存在するわずかな寄生インダクタンスや配線構造、ゲート駆動回路の設計などによって、実際のスイッチング波形が大きく変化する場合がある。
このため、半導体デバイス単体で良好な電気特性が確認できたとしても、そのデバイスをパワーモジュールへ実装し、さらにゲートドライバーなどの駆動回路と組み合わせた際に、同じ性能が得られるとは限らない。
高出力GaNの実用化を進めるためには、デバイスを「作る技術」だけではなく、実際の使用状態に近い環境でデバイスやモジュールを「正確に測る技術」が重要になる。
ダブルパルス法でGaNパワーモジュールを評価
今回共同開発された「ダブルパルステスター」は、パワー半導体のスイッチング性能を評価する際に広く使用されるダブルパルス法に対応する。
ダブルパルス試験では、パワーデバイスに二つのパルス信号を与え、その際に発生する電圧や電流の変化を測定する。これにより、ターンオンやターンオフ時の挙動、スイッチング損失、サージ電圧などを確認できる。
特に高速スイッチングを特徴とするGaNでは、短い時間領域で発生する電圧・電流変化を高精度に捉える必要がある。測定回路そのものの構造や配線、測定機器の構成も評価結果に影響するため、測定環境の設計が重要になる。
今回の装置はGaNパワーデバイスだけでなく、パワーモジュールと駆動回路を組み合わせた状態で測定できる点が特徴となる。また、測定したスイッチング波形の解析にも対応する。
開発された1号機はすでに国立大学法人大分大学に設置され、GaNをはじめとする次世代パワー半導体の研究開発に利用されている。
リードテックとNext Semiconductorがそれぞれの技術を持ち寄る
今回の共同開発では、半導体関連装置を手掛けるリードテックと、GaN・SiCなど次世代パワー半導体の研究開発を手掛けるNext Semiconductorが、それぞれの技術や知見を持ち寄った。
リードテックは、測定装置の設計・製造・製品化を担当したほか、顧客への装置搬入、立ち上げ、メンテナンスまでを担当する。さらに、半導体デバイスを自動で搬送して測定するハンドラーと評価装置を組み合わせた提案にも対応する。
同社はこれまでSiCデバイスの量産工程におけるテスターおよびハンドラーの製造実績を持っており、次の開発テーマとして高出力GaNデバイス向けテスターの開発に取り組んだ。
一方、Next Semiconductorは、高出力GaNを評価するために必要となる要件の定義、パワーモジュールと駆動回路を含めた評価条件の設計、完成した装置を使った実機検証などを担当した。
Next Semiconductorは、パワーデバイス、パワーモジュール、駆動回路を一体的に最適化する研究開発体制を特徴としている。大学研究者を中核とし、半導体デバイスからモジュール、電力変換装置までを一つのチームで設計できる体制を構築してきた。
今回製品化されたダブルパルステスターについても、同社が高出力GaNの研究開発を進める過程で実験室内に構築してきた測定環境がベースになっている。
研究機関やパワー半導体メーカーへの展開を計画
両社は今後、今回開発したダブルパルステスターを、大学をはじめとする研究機関のほか、パワーデバイスメーカー、パワーモジュールメーカー、インバータメーカーなどへ提案していく。
研究開発用途だけでなく、将来的には高出力GaNデバイスやモジュールの開発・評価環境として幅広く利用される可能性がある。
また、両社は評価装置の開発と並行し、高出力GaNパワーモジュールそのものの研究開発も継続する。装置の具体的な仕様や提供体制については、準備が整い次第、改めて公表する予定としている。
2026年電気学会産業応用部門大会で実機を公開
Next Semiconductorは、2026年9月1日から9月3日まで岡山大学津島キャンパスで開催される「2026年電気学会産業応用部門大会」に出展する。
企業展示では、今回リードテックと共同開発したGaNパワー半導体向けダブルパルステスターの実機を公開する。
- イベント:2026年電気学会産業応用部門大会
- 会期:2026年9月1日(火)~9月3日(木)
- 会場:岡山大学 津島キャンパス
- 所在地:岡山県岡山市北区津島中1-1-1
- 展示内容:ダブルパルステスターの実機公開
GaNの高出力化で評価装置市場にも新たな需要
GaNパワー半導体は、これまでスマートフォン充電器など比較的小電力の用途を中心に普及してきた。一方、今後EV、産業用インバータ、データセンター電源などへ適用範囲が拡大すれば、より高電圧・大電流環境での評価技術が求められる。
半導体産業では、デバイス技術の進歩とともに、テスターや検査装置、計測機器、ハンドラーなど周辺装置にも新しい市場が生まれる。SiCの量産拡大でも専用評価装置や検査技術の需要が拡大してきた。
GaNについても高出力化が進めば、研究開発段階だけでなく、量産工程における電気特性評価や品質保証まで含めた評価・検査インフラの重要性が高まるとみられる。
今回のリードテックとNext Semiconductorによる共同開発は、高出力GaN市場の拡大を見据え、デバイスそのものだけではなく「評価・測定」という周辺領域から市場形成を支える取り組みとしても注目される。
株式会社リードテック
株式会社リードテックは福島県いわき市に本社を置き、半導体ならびにLCD製造機械設備の設計、製作、販売を手掛ける企業。代表取締役社長は杉浦正幸氏。SiCデバイス量産向けのテスターやハンドラーなど、半導体検査・評価関連装置の開発・製造実績を持つ。
株式会社Next Semiconductor
株式会社Next Semiconductor(ネクストセミコンダクター)は、大分県大分市に本社を置く次世代パワー半導体関連企業。2022年5月設立。GaNやSiCなどの次世代パワー半導体を用いた技術開発、試作、技術コンサルティングを手掛ける。
代表取締役CEOは松本武弥氏、代表取締役CTOは大森雅登氏。大分大学研究マネジメント機構棟内に拠点を置き、大学研究者を中心とした研究開発体制を構築している。
出典:株式会社Next Semiconductor「リードテックとNext Semiconductor、GaNパワー半導体のスイッチング評価装置を共同開発」(PR TIMES、2026年9月1日)
※本記事は、株式会社Next Semiconductorが2026年9月1日に公表したプレスリリースの内容をもとに、半導体構造メディア編集部がニュース記事として構成しています。
