結論:米メモリ大手Micron(マイクロン)が、日本時間6月25日未明(米6月24日の取引終了後)に2026会計年度第3四半期(3〜5月期)決算を発表する。市場が注視するのは数字の大小そのものではない。AIブームで沸くメモリ市場の好況が、一過性の「循環(サイクル)」なのか、それとも構造的な「地殻変動」なのか——その答えを占う最初の試金石になるからだ。なお本記事は決算発表前の執筆であり、金額は会社ガイダンス(3月時点)と市場予想(報道ベース)に基づく。実績値は発表後に確認が必要だ。
ガイダンスと市場予想:四半期で売上6割増の勢い
Micronは3月の前回決算で、第3四半期の売上高を335億ドル(±7.5億ドル)、粗利益率を約81%と見込むと示した(会社ガイダンス)。前四半期(第2四半期)の売上が238.6億ドルだったため、達成すれば四半期比で約40%増という異例の伸びになる。市場予想(報道ベース)はさらに強気で、Reuters・Investing.com等によればEPS(1株利益)はおよそ19ドル台後半、売上は340〜350億ドル前後と、前四半期の12.20ドルから6割超の急増が織り込まれている。背景にあるのは、2026年のHBM(広帯域メモリ)生産枠が年内分すでに完売しているという需給の逼迫だ。同じAIメモリ特需は、すでにSK hynixの四半期最高益やSamsungの過去最高営業利益として表面化しており、Micronの決算はその「3社目の答え合わせ」に当たる。
構造論点①:DDR5がHBMの利益率を逆転した
今回最も「構造的」な論点は、好況の主役が見かけの主役であるHBMだけではない点だ。前回決算でMehrotra CEOは「足元では非HBM(汎用DRAM)の利益率がHBMを上回っている」と述べたと報じられた(The Elec等)。つまりDDR5などの汎用DRAMが、価格急騰によってHBM以上の収益源になっているということだ。TrendForceによれば、汎用DRAMの大口契約価格は2026年1〜3月期に前期比93〜98%上昇し、4〜6月期もさらに58〜63%上昇する見通しだという。AI向けHBMへの生産シフトが汎用DRAMの供給を細らせ価格を押し上げる——この「二層化するメモリ市場」の構造が、Micronの利益率を二重に押し上げている。その副作用は意外な場所にも及び、車載DRAMが3カ月で約180%高騰するといった歪みも生んでいる。
構造論点②:HBM4・HBM4Eと「ロジックのTSMC化」
第二の論点は、HBMが単なるメモリから「先端ロジックとの融合体」へ進化していることだ。6月初旬、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、次世代プラットフォーム「Vera Rubin」向けHBM4の供給について、Micron・Samsung・SK hynixの主要3社すべてを承認したと述べた(Bloomberg報道)。さらに次世代のHBM4Eでは、Samsungが5月下旬に先行サンプル出荷し、SK hynixが6月中旬に続くなど試作競争が号砲を鳴らしている。Micronも、初代HBM4EをJEDEC標準準拠とし量産立ち上げを2027年に置く方針で、その「ロジックダイ」の製造はTSMCに委託すると説明している。これはSK hynixがHBM4のベースダイをTSMCに委託した動きと軌を一にするもので、メモリ各社が先端ロジック工程をファウンドリ最大手に依存する構図が鮮明になりつつある。MicronはHBM4で用いる1-beta DRAMから、HBM4E世代では1-gamma DRAMへ微細化を進めるとされる。
構造論点③:巨額capexと「次の谷」リスク
強気一色に見える一方で、構造的なリスクも積み上がっている。Micronは2026会計年度(8月期)の設備投資が250億ドルを超える見通しで、これは市場予想(約224億ドル)を上回る。2027年度はさらに100億ドル以上上積みされる可能性があるという(Bloomberg報道)。問題は、この巨額投資による新規生産能力が意味のある形で立ち上がるのが2027年後半〜2028年とされる点だ。メモリ業界は歴史的に「需要逼迫→各社が増産投資→供給過剰→価格暴落」というサイクルを繰り返してきた。いまの記録的な利益率が、AI需要に支えられた構造的な高水準なのか、それとも次の供給過剰局面の入口なのか——6月24日の決算は、その分水嶺を読む材料になる。
日本・アジアへの含意
Micronの決算は、日本の半導体エコシステムにとっても他人事ではない。HBM・DRAMの増産投資は、製造装置や材料各社の受注に直結する一方、米国の対中輸出規制は供給網全体の前提を変えつつある。中国ファウンドリ向けの装置規制のような動きは、メモリ各社の生産配置にも影を落とす。さらにAIメモリ特需は、パワー半導体市場やRapidusの2nm設計支援、日立のエッジAIチップといった周辺領域の投資判断にも波及していく。Micronの「答え合わせ」は、メモリ単独ではなく半導体産業全体の温度計として読むべきだろう。
※本記事は決算発表前に作成しており、金額・利益率は会社ガイダンス(2026年3月時点)および各社報道による市場予想に基づく「報道ベース」の数値である。確定値は発表後に更新が必要。
出典
TrendForce「Micron Earnings Preview: Four Key Areas in Focus」(2026年6月22日)/Reuters(2026年3月18日)/Bloomberg(2026年6月5日)/Investing.com(2026年6月)/The Elec ほか海外報道に基づく。
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