結論:台湾のメモリメーカーNanya(南亜科技)とWinbond(華邦電子)が2026年9月の売上で過去最高を更新しました。両社の数字が示すのは、DRAM価格の上昇が一部の最先端品にとどまらず、DDR4などのレガシー品や特殊メモリにまで波及し、「作れば売れる」ではなく「そもそも供給枠が足りない」局面に入っているという構造です。
何が起きたか:9月売上は両社とも過去最高
TrendForceの報道(2026年10月6日)によると、Nanyaの9月売上は450.9億台湾ドルで前月比0.9%増、前年同月比では約6.8倍(+576.62%)でした。7〜9月期は1,336.5億台湾ドルで、前四半期比61.9%増です。Winbondの9月売上は282.5億台湾ドル(前月比3.44%増、前年同月比+256.67%)、7〜9月期は823.3億台湾ドルで前四半期比37.58%増でした。
価格見通しも強気です。Nanyaは2026年10〜12月期のDRAM平均販売価格(ASP)が前四半期比でさらに約10%上昇すると見込み、Winbondも同8〜13%の上昇を想定しています。Winbondによれば、7〜9月期にはニッチDRAMとSLC NANDが前四半期比40〜50%、NOR Flashが約30%上昇したとされます(いずれも報道ベース)。前月比の伸びは1〜3%台と小さく、売上はすでに高い水準で横ばいに近づいている点も見逃せません。成長の主因は数量の急増ではなく、価格水準の切り上がりにあります。
構造①:大手が先端・サーバー向けに寄り、周辺が「あふれ需要」を受ける
背景には、大手3社の生産配分の変化があります。TrendForceの2026年4〜6月期DRAM業界売上は約1,547億ドルで前四半期比59.5%増。シェアはSamsungが39.4%、SK hynixが24.9%、Micronが23.3%と、上位3社でほぼ9割に達します。先端プロセスの生産能力がHBMやサーバー向けDRAMに優先配分されるため、汎用DRAMやDDR4・DDR3の供給は細ります。
その結果、Nanyaの同四半期DRAM売上は約26.1億ドル(前四半期比68.3%増)、Winbondは約10億ドル(同75.8%増)と、大手が手放した領域の需要が中堅に流れ込みました。メモリの収益機会が、HBMだけでなく「大手が作らなくなった製品」にも広がっている点が今回の特徴です。HBM側の動きはTrendForceの2027年HBM価格予測の記事でも整理しています。
構造②:長期契約と「供給枠」が価格を決める
Nanyaは顧客需要の50〜60%程度しか満たせておらず、長期契約が供給の6割超を占めると報じられています。一部の大口顧客には割り当てを確保できていないとも伝えられました。つまり価格は市況で毎日決まるのではなく、契約と供給枠の交渉で決まる色合いを強めています。この流れは、Micronの粗利益率87%や前払い契約による供給枠の確保で見えた構造と同じ線上にあります。
また、MicronのDRAMシェアがSK hynixに接近した動きや、SamsungとASMLによるHigh-NA EUVのDRAM量産計画が示すように、大手は先端側への投資を加速しています。この投資が先端に偏るほど、レガシー側の供給が再び増える可能性は低くなります。買い手にとっては、価格交渉よりも、数量を確保できるかどうかが調達上の最優先課題になりつつあります。
構造③:NANDにも同じ圧力が及ぶ
価格上昇はDRAMだけではありません。TrendForceの4Q26 NAND契約価格予測にあるとおり、NANDも上昇基調にあります。さらにNanyaは台湾の国家科学及技術委員会から、屏東科学園区での先進3Dウェハーパッケージ(TSV・ウェハー積層)の拠点計画の承認を得たと報じられており、中堅メーカーも「汎用品を作る会社」から「先端パッケージに関与する会社」へ役割を広げようとしています。
この動きは、投資や提携を考える立場から見ると、中堅メモリメーカーの評価軸が「容量・コスト競争力」から「どの顧客の供給枠を握っているか」「先端パッケージ技術にどこまで入り込めるか」へ移っていることを意味します。単なる市況の追い風と、構造的な優位性は分けて見る必要があります。
今後の注目点
第一に、2027年に向けて大手の増設が進んだ時、レガシー品の逼迫が緩むかどうかです。第二に、長期契約の比率がさらに高まれば、スポット価格より契約条件の開示が業績を読む鍵になります。第三に、価格上昇が最終製品側の需要を冷やす兆候が出るかどうかです。Micronの前四半期見通しやHBMのベースダイをめぐる動きと合わせ、供給側の優先順位がどこへ向かうかを追う必要があります。数値の一部は報道・予測ベースであり、各社の正式発表で確認が必要です。
出典:TrendForce「[News] Nanya DRAM ASP Seen Rising 10% in 4Q26; Winbond Also Sees Further Price Gains as Memory Supply Stays Tight」(2026年10月6日)/TrendForceプレスリリース「DRAM Industry Revenue Rises 59.5% QoQ in 2Q26」(2026年9月7日)
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