結論:Counterpoint Researchの調査として韓国メディアが報じたところによれば、2026年第2四半期のDRAM市場でMicronはSK hynixとのシェア差をわずか1ポイントまで縮めました(第1四半期は7ポイント差)。首位はSamsung Electronics、2位SK hynix、3位Micronという順位自体は変わっていませんが、重要なのは順位ではなく「シェアを動かす力が、工場の増設ではなくAI向けの高付加価値品の配分に移った」点です。DRAM市場の序列は、いまや設備投資の規模ではなく、誰がAIサーバー向けの供給枠を押さえるかで決まりつつあります。
何が起きたのか:1四半期で6ポイント縮まった首位争い
KED Globalが2026年10月2日に報じた内容では、Counterpoint Researchの2026年第2四半期データで、MicronとSK hynixの差は1ポイントに縮小しました。第1四半期の7ポイントから、わずか1四半期で6ポイント詰めたことになります。DRAMのシェアは数年単位でじわじわ動くのが通例であり、これほど急な変化は異例です。なお、これは報道ベースの数値であり、調査会社ごとに集計方法(売上ベースか、HBMを含むか等)が異なる点には注意が必要です。
背景にあるのは、AIデータセンター向けメモリの急拡大です。Micronに関しては、GDDR7 2GB品の生産終了の記事で触れたように、コンシューマー向けの製品を絞り、より収益性の高い用途へ生産能力を振り向ける動きが続いています。数量を追うのではなく、単価と利益の高い製品に集中する戦略が、売上シェアの上昇として表れていると考えられます。
構造的に何が起きているか:シェアは「売上」で動き、売上は「配分」で決まる
DRAMのシェアは通常、売上ベースで測られます。このため、同じウエハー枚数でもHBMやサーバー向け高容量DRAMに振り向けた企業ほど売上シェアが伸びます。コンシューマー向け汎用DRAMの価格が弱含んでも、AI向けの比率が高い企業は売上が伸びる構造です。つまり、シェア争いの主戦場は「どれだけ作れるか」から「どの用途に何割を割り当てるか」に変わりました。
TrendForceは2026年第4四半期の契約価格について、汎用DRAMが前期比10〜15%上昇、NAND型フラッシュが15〜20%上昇、HBMのブレンド価格が15〜20%上昇と予測しています(Evertiq、10月2日付の報道による)。サーバー向けDRAMは供給不足が続く見通しで、エンタープライズSSDのビット需要は年率80%超の伸びが見込まれるとされています。供給側がAI向けに偏るほど、他の用途に回る供給は細り、価格が押し上げられるという連鎖です。
この「AI向け優先」の動きは、メモリ単体の話にとどまりません。TSMCのCoWoS-Lが2028年までAIチップ包装の主流になるという見通しや、シリコンウエハー価格が2027年に大きく上昇するという予測とあわせて見ると、先端パッケージからウエハーまで、サプライチェーン全体でAI向けの供給枠が先に埋まっていく構図が見えてきます。
競争環境への影響:中国勢と消費者向けへのしわ寄せ
一方で、供給がAI向けに偏る分、スマートフォンやPCなど消費者向けでは価格負担が重くなっています。TrendForceによれば、スマホやPCメーカーは部材コスト上昇を受けて発注を減らし、SSD容量を削る動きを見せています。PC向けDRAMは、サーバー向けへの生産能力の移行により2027年に供給が逼迫する可能性も指摘されており、PCメーカーが前倒しで購入しているとされます。
こうした隙間を狙うのが中国勢です。CXMTがNAND参入、YMTCがDRAMへ逆侵攻する動きは、既存大手が高付加価値品に集中して生まれた汎用品の空白を埋める動きとも読めます。また、SK hynixがシリコンバレーでCVCを立ち上げたことも、HBMの先を見据えた囲い込みの一環と捉えられます。
今後の注目点
第一に、第3四半期のシェアでMicronがSK hynixを抜くかどうかです。ただし、順位入れ替えそのものよりも、HBM・サーバー向けの比率が各社の利益率をどう変えるかのほうが、投資家や事業会社にとっては重要です。第二に、第4四半期の価格上昇が実際に契約へ反映されるか、そして消費者向け需要の減速が価格を押し戻さないかです。第三に、NVIDIA H200の対中輸出のように、地政学・規制が供給枠の配分に介入する余地も無視できません。
M&Aや事業参入を検討する立場からは、メモリ企業の価値を「生産能力」ではなく「AI向け供給枠をどれだけ長期契約で確保しているか」で測る視点が一段と重要になります。シェアの数字は結果であり、その手前にある配分の仕組みを見ることが、構造理解の近道です。
出典:KED Global「Micron closes in on SK Hynix for No. 2 spot in global DRAM market」(2026年10月2日、Counterpoint Research調査を引用)/Evertiq「AI keeps memory prices climbing in Q4 as consumer demand weakens」(2026年10月2日、TrendForce予測を引用)。数値は報道ベースであり、調査会社の定義により異なる場合があります。
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