【2026年4月15日】ASML Q1決算|売上88億ユーロ・通期見通し引き上げもEUV中国リスクが残る

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結論:ASMLは2026年4月15日、2026年1〜3月期(Q1)決算を発表した。売上高88億ユーロ、純利益28億ユーロ、粗利益率53.0%と好調な業績を示し、2026年通期売上見通しを360〜400億ユーロに引き上げた。EUV露光装置の独占的地位を背景にAI需要の恩恵を享受しているが、中国向け輸出規制リスクと米議会のDUV規制強化議論が業績の不確実要因として浮上している。

目次

何が発表されたのか|Q1決算の全容

ASMLが2026年4月15日に発表した2026年Q1(1〜3月期)決算の主要数字は以下の通りだ。

  • 売上高:88億ユーロ(約1兆4,000億円)
  • 純利益:28億ユーロ(約4,500億円)
  • 粗利益率:53.0%
  • 受注高:(通期見通し引き上げの根拠となる受注残を確保)
  • 2026年通期売上見通し:360〜400億ユーロ(従来予想から上方修正)

粗利益率53.0%という数字は製造業としては驚異的な水準だ。これはASMLがEUV露光装置という「世界で唯一製造できる装置」を持つことによる圧倒的な価格決定力の証だ。顧客はASML以外に選択肢がなく、価格交渉の余地がほぼない。

ASMLの独占的地位|なぜ他社が追いつけないのか

ASMLがEUV露光装置市場で世界シェア100%を維持できる理由は3つの構造的要因にある。

① 30年以上の技術開発の蓄積

EUV露光装置の開発にはIntel・TSMC・Samsungが共同出資しながら30年以上・数兆円規模の研究開発投資が必要だった。この技術的障壁は新規参入者には事実上越えられない壁だ。中国がEUV技術の自力開発を試みているが、物理的・技術的な限界から短期的な実現は不可能とみられている。

② High-NA EUVという次世代独占

現行EUV(NA=0.33)の次世代として「High-NA EUV(NA=0.55)」の出荷が始まっている。1台約1,000億円というさらに高価な装置だが、2nm以下の最先端プロセスにはこれが不可欠だ。IntelがHigh-NA EUVの最初の顧客となり、TSMCとSamsungも導入を予定している。

ASMLはHigh-NA EUV世代でもすでに独占を確立している。現行EUVで独占→次世代High-NA EUVでも独占というサイクルが続いており、ASMLの競争優位は今後10年以上崩れない構造になっている。

③ エコシステムとの深い統合

ASMLのEUV装置は東京エレクトロンの塗布・現像装置、各種材料メーカーのフォトレジスト、TSMCやSamsungの製造エンジニアリングと深く統合されている。単体の装置ではなく「エコシステム全体」として機能しており、このエコシステムを構築するには数十年単位の時間が必要だ。

通期見通し引き上げの背景

ASMLが2026年通期売上見通しを360〜400億ユーロに引き上げた背景には2つの要因がある。

第一にAI向け先端半導体需要の拡大だ。GAFA4社が2026年のAI設備投資を前年比76%増の116兆円に引き上げており、TSMCを中心とするファウンドリの設備投資拡大がEUV装置需要に直結している。

第二にHigh-NA EUV受注の拡大だ。1台約1,000億円というHigh-NA EUVの受注が積み上がっており、これが単価上昇として売上見通しの引き上げに寄与している。

最大のリスク|中国向け輸出規制の影響

ASMLの業績にとって最大の不確実要因は中国向けの輸出規制だ。

EUV露光装置は2019年から中国への輸出が禁止されている。さらに2023年以降はDUV(ArF液浸)露光装置の一部についても輸出規制が強化された。これにより中国向け売上が大幅に縮小している。

2026年4月16日には米議会でMATCH Act(中国向け半導体製造装置規制法案)の修正案が議論されており、ASMLのDUV液浸露光装置への追加制限が焦点になっている。DUV規制が強化された場合、SMIC・Hua Hong・CXMTなど中国ファウンドリへの装置販売がさらに制限され、ASMLの中国向け売上に追加的な打撃を与える可能性がある。

日本企業への波及効果

ASMLの業績拡大は日本の半導体産業に重要な波及効果をもたらす。

  • 東京エレクトロン:EUV塗布・現像装置で世界シェア100%。ASMLのEUV出荷増加はTELの装置需要増に直結する
  • 信越化学・JSR・東京応化工業:EUVプロセスに必要なフォトレジスト材料の需要増加
  • ニコン・キヤノン:DUV露光装置メーカーとして、中国向け規制強化の影響を受けるリスクがある

ASMLとTELは「EUV製造ラインの二大インフラ企業」として不可分の関係にある。ASMLのEUV装置がなければTELの塗布・現像装置は必要なく、TELの装置なければEUVプロセスは成立しない。両社の業績連動性は非常に高い。

投資・M&A視点からの評価

ASMLを投資視点で評価する際の核心は3点だ。

第一にHigh-NA EUVの量産立ち上げペースだ。1台約1,000億円というHigh-NA EUVの出荷が加速するほど、ASMLの平均単価と売上が上昇する。2026〜2028年の出荷スケジュールが最重要モニタリング指標になる。

第二に中国向けDUV規制の行方だ。米議会のMATCH Act修正の動向が、ASMLの中国向け売上規模を決定する。規制強化の場合は短期的な収益への影響が大きい。

第三にAI需要サイクルの持続性だ。TSMCの設備投資計画が維持される限り、EUV需要の高水準継続が見込まれる。

M&Aの観点では、ASMLは時価総額・戦略的重要性ともに「買収不可能」な企業の一つだ。オランダ政府が戦略的資産として保護しており、外資による買収は現実的でない。日本からのアクセスとしては、ASMLのサプライチェーンに位置する企業(TEL・光学部品メーカー等)への投資が間接的にASML成長を取り込む戦略になる。

まとめ

  • 2026年Q1:売上高88億ユーロ・純利益28億ユーロ・粗利益率53.0%
  • 2026年通期売上見通しを360〜400億ユーロに引き上げ
  • EUV露光装置で世界シェア100%・High-NA EUV世代でも独占を確立
  • AI需要拡大→TSMC設備投資増→EUV需要増という好循環が継続
  • 中国向けDUV規制強化(MATCH Act)が最大のリスク要因
  • 東京エレクトロンとの「EUV製造ライン二大インフラ企業」という相互依存関係

ASMLの本質は「半導体産業の咽喉部を握る企業」だ。EUV露光装置なしに最先端半導体は製造できず、最先端半導体なしにAIは動かない。この連鎖の起点にいるASMLの独占的地位は、少なくとも今後10年は崩れない構造にある。通期見通しの引き上げはその確信の表れだ。


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