結論:NVIDIAが次世代AI GPU「Vera Rubin」向けに、DRAMを16段積み重ねた「16段(16-Hi)HBM4」を2026年後半までに供給するよう、メモリ大手へ要請したと報じられている。まだ12段HBM4すら本格量産に入っていない段階での前倒し要求であり、SK hynix・サムスン・Micronの三社は開発を一気に加速させている。ここで起きているのは単なる容量競争ではない。775μmという物理的な高さ制限の中に16層を詰め込むため、競争の主戦場が「何段積めるか」から「どの接合(ボンディング)技術で歩留まりを確保できるか」へと構造的に移りつつある——これが本質だ。
なぜNVIDIAは「16段」を前倒しで求めるのか
NVIDIAは2026年のCES前後から、次世代プラットフォーム「Vera Rubin」の最初かつ当面唯一のHBM4顧客として供給網を主導している。TrendForceによれば、NVIDIAはピンあたりの転送速度を11Gbps超へと引き上げ、三社にHBM4の設計見直しを迫った。さらに報道ベースでは、12段HBM4の供給に続いて16段の供給要請が出ており、2026年第3四半期より前に性能評価を始める可能性があるという。背景にあるのは、AIサーバーがGPU1基あたりで要求するメモリ帯域と容量の急拡大だ。GPUの演算性能が上がっても、隣接するHBMが供給する帯域が追いつかなければ性能は頭打ちになる。だからこそNVIDIAは、まだ量産が立ち上がっていない16段を前倒しで押さえにきている。関連する動きとして、あえてHBMを載せずにAI推論市場を狙うQualcommの設計や、GPUを売り切らずクラウド収益の分配を受ける新しい商流も現れており、AI半導体の「稼ぎ方」そのものが多様化している。
12段から16段への壁——「30μmのウェハ」と「775μmの天井」
16段HBMは、これまで商用化されたことのない領域だ。最大の難関はDRAMを薄く削る「ウェハ薄化」にある。現在の12段HBMではウェハ厚が約50μmだが、16層を積むにはこれを約30μmまで薄くする必要があると報じられている。加えてJEDEC(半導体規格団体)が定めるHBM4のパッケージ高さは775μmで、HBM3Eの725μmより50μm厚いだけだ。この余裕はもともと多層化のために与えられたものだが、16段でもこの775μmは引き上げられない見通しで、限られた天井の中により多くのDRAMを積み込まなければならない。DRAM同士をつなぐ接合材の厚みも現状で約10μm前後あり、これをさらに削らなければ競争力を確保できない。しかも接合後に発生する熱の放散も課題となる。つまり16段HBMは「積層数の勝負」に見えて、実際には数十μm単位の薄化と放熱を両立させる「製造技術の勝負」なのだ。
MR-MUF・TC-NCF・ハイブリッドボンディング——分岐する三社の戦略
この製造技術をめぐって、三社の戦略は明確に分かれている。首位のSK hynixは、独自の「MR-MUF」(積層したチップを一括で加熱・接合する方式)で歩留まりを安定させ、CES 2026では業界初の16層・48GB HBM4を披露した。これは11.7Gbpsの速度記録を持つ12層・36GB品を土台にしたもので、2TB/秒超の帯域を実現するという。一方、サムスンとMicronはチップを1枚ずつフィルムで接合する「TC-NCF」を採用する。特にサムスンは、次世代のハイブリッドボンディング——チップ同士を金属で直接接合し、接合材の厚みそのものをなくす技術——に賭けており、2028年の16層HBM4E量産を狙う。ただしNVIDIA向け試作品の歩留まりは1割程度にとどまると報じられ、量産化の壁は高い。85%という高粗利率を叩き出したMicronも1-beta世代で11Gbps超のHBM4を実現し、2026年第2四半期の高歩留まり立ち上げを目指す。同じ「16段」という目標に対し、三社が別々の接合技術で挑んでいる点が、今回の競争の特異性だ。
構造的に何が起きているのか——競争軸は「量産技術」へ
ここで押さえるべき構造的な変化は、HBMの勝敗を決める軸が「設計・速度」から「接合技術と歩留まり」へと移っている点だ。速度や容量の目標値は三社ともほぼ横並びで11Gbps超に到達しつつある。差がつくのは、その仕様を歩留まりよく量産できるかどうかであり、それを左右するのが接合・パッケージング技術になっている。この流れは後工程(パッケージング)全体の価値を押し上げ、TSMCとAmkorの10年提携やASEによる先端パッケージの2割超値上げといった動きにつながっている。メモリ各社が数百兆ウォン規模の巨額増設に走るのも、単なる数量拡大ではなく、16段のような難度の高い製品を安定量産できる設備と技術を先に押さえる競争だからだ。かつて「何ナノで作れるか」が前工程の主戦場だったように、HBMでは「どの接合技術で16段を歩留まりよく積めるか」が次の主戦場になる。投資家や装置・材料メーカーにとっては、完成品メーカーの市場シェアだけでなく、その裏にある接合方式(MR-MUF対ハイブリッドボンディング)の優劣こそが、今後2〜3年の勢力図を決める先行指標になるだろう。
出典:TrendForce「NVIDIA Fuels HBM4 Race: 12-Layer Ramps, 16-Layer Push by SK hynix, Samsung, and Micron」(2026年1月9日)、TweakTown/電子新聞(etnews)報道「SK hynix, Samsung, and Micron fighting for NVIDIA supply contracts for new 16-Hi HBM4 orders」(2025年12月28日)。本文中のNVIDIAの16段要請時期や各社の歩留まり等は報道ベースの情報を含みます。

コメント