【2026年7月】HBM4「ベースダイ戦争」の構造|サムスン自社4nm・SKハイニックス&マイクロンはTSMC連合、三社三様の分岐を解説

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結論:HBM(広帯域メモリ)の競争軸は、DRAMを何段積めるかという積層技術から、「ベースダイ(ロジックダイ)をどこで・どのプロセスで製造するか」へと移った。サムスン電子は自社ファウンドリの4nm、SKハイニックスはTSMCの3nm(報道ベース)、マイクロンもTSMCと組んで標準品+カスタム品の二本立てを狙う。メモリの「土台」が先端ロジックチップになったことで、DRAM3社の勝敗の一部はファウンドリ戦略で決まる時代に入った。これが今回の海外報道から読み取れる構造変化だ。

何が起きたか:HBM4世代で製造アプローチの分岐が鮮明に

台湾DIGITIMESは2026年7月10日、サムスン電子・SKハイニックス・マイクロンの3社がHBM4のロジックベースダイでそれぞれ異なる製造パスを採用しており、性能・歩留まり・供給力をめぐる新たな競争の前線が開かれたとする分析記事を公開した。背景にはスケジュールの前倒し競争がある。TrendForceによれば、2026年第2四半期に入りメモリの売り手と買い手の交渉はすでに2027年向けHBM4供給契約へとシフトしており、HBM4は来年の主流世代になる見通しだ。つまり今まさに、各社の製造方式の違いが2027年の受注シェアを左右する局面に入っている。

ベースダイとは何か:HBMの「土台」がロジックチップになった

HBMはDRAMダイを垂直に積み重ね、最下層の「ベースダイ」を通じてGPUと超広帯域でデータをやり取りする構造のメモリだ。HBM3E世代まで、このベースダイはDRAMプロセスで製造でき、メモリメーカーの社内で完結していた。ところがHBM4世代からベースダイはロジックプロセスで作る「ロジックダイ」となり、信号制御や電力管理などプロセッサ的な機能を担うようになった。DRAMが電子の蓄積・放出で情報を記憶する素子であるのに対し、ロジックベースダイは演算・制御を行う半導体であり、求められる製造技術がまったく異なる。ここに「自社で作るか、ファウンドリに委ねるか」という戦略分岐が生まれた。

三社三様:垂直統合のサムスン、TSMC連合のSKハイニックス・マイクロン

サムスン電子は3社で唯一、メモリとファウンドリの両方を社内に持つ。HBM4/HBM4Eのベースダイを自社4nmプロセスで製造する垂直統合路線だ。聯合ニュースによれば同社は2026年5月末、業界初のHBM4Eサンプル出荷を完了しNVIDIAに供給した。1c DRAMコアダイ+4nmベースダイの組み合わせで、ピン当たり最大14Gbps(ピーク16Gbps)、スタック帯域は最大4TB/s級とされる。COMPUTEX 2026では次世代HBM5のモックアップも初公開した。

HBM市場シェア首位(6割前後との報道)のSKハイニックスは、先端ロジックの製造能力を持たないため、HBM4世代からベースダイでTSMCと提携する。朝鮮日報は、HBM4EのロジックダイにTSMCの3nmプロセスを採用しサムスンの4nm設計に対抗する見込みと報じた。コアダイもHBM4の1bから1cへ微細化する。さらに韓国Newsisによれば、同社はHBM4E開発で良好な結果を得ており、当初「2026年下期」としていたサンプル出荷を前倒しし、6〜7月にも主要顧客へ出荷すると観測されている(報道ベース)。

マイクロンも同じくTSMC陣営だ。2027年のHBM4E量産に向け、TSMCで標準品とカスタム品の両方のロジックダイを準備していると報じられている。標準品で量を確保しつつ、顧客専用のカスタムHBMで利益率を狙う二本立てである。同社の増産投資と地政学的な位置づけはマイクロン2,500億ドル投資の解説記事もあわせて参照してほしい。

構造的に何が起きているか:メモリとロジックの境界が溶けている

第一に、メモリの「ファウンドリ依存」が始まった。SKハイニックスとマイクロンのHBM競争力は、今後TSMCの先端ノード割り当てに部分的に依存する。NVIDIAのGPU本体も同じTSMCで製造されるため、TSMCはAIサーバーの演算とメモリ、双方の土台を握ることになる。サムスンだけが自社完結できるが、裏を返せば4nmの歩留まりリスクを一社で抱え込む構図でもある。

第二に、カスタムHBM時代の入口に立った。ベースダイがロジック化したことで、NVIDIAやハイパースケーラーなど顧客ごとに機能を作り込む「カスタムHBM」が技術的に可能になった。コモディティだったDRAMが、準ASIC的な受注ビジネスへ性格を変えつつある。TrendForceは、NVIDIAが2027年に投入するRubin UltraでGPU当たりHBM搭載量が384GBへ拡大すると見ており、この流れを後押しする。

第三に、検査・テスト工程の価値が上がる。DRAM積層とロジックの複合品となったHBMは不良コストが極めて高く、HBM向け検査装置を手がけるCamtekAIチップ対応テスト装置のChroma ATE信頼性評価インフラを担うCincinnati Sub-Zeroのような装置・評価企業への追い風となる。工程の高度化はクリーンルームの分子汚染制御(Camfil)のような周辺インフラの要求水準も引き上げる。

今後の注目点

直近では、SKハイニックスのHBM4Eサンプル出荷が実際に7月中に確認されるか、そしてサムスン4nmベースダイの歩留まりとNVIDIA認定の行方が焦点となる。中期的には2027年向けHBM4供給契約の価格交渉が業界の損益を大きく左右する。HBM4のベースダイ競争は、単なる新製品競争ではなく「メモリ企業がロジックをどう調達するか」という半導体の分業構造そのものを組み替える動きだ。日本の装置・材料メーカーにとっても、ロジックとメモリの境界領域で商機が広がる局面であり、当サイトでは引き続き構造面から追っていく。

出典:DIGITIMES「Analysis: Samsung, SK Hynix, and Micron’s diverging approach to HBM4 base dies」(2026年7月10日)/TrendForce「SK hynix Reportedly Pulls Forward HBM4E Sample Timeline」(2026年6月15日、原典:Newsis・朝鮮日報・聯合ニュース)/TrendForceプレスリリース(2026年6月2日)/Samsung Newsroom(2026年5月)

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