結論:フェルミ準位とは、物質中で電子がどのエネルギー状態まで存在しやすいかを示す基準である。半導体では、フェルミ準位の位置を見ることで、電子と正孔のどちらが多いか、n型かp型か、接合部でどのような電位差が生じるかを理解できる。
フェルミ準位とは
フェルミ準位(Fermi Level)は、電子のエネルギー分布を表すための基準となるエネルギーである。熱平衡状態では、電子がそのエネルギー状態を占有する確率が50%になる位置として定義される。
半導体では、フェルミ準位が伝導帯に近いか、価電子帯に近いかによって、主要なキャリアが電子か正孔かを判断できる。
フェルミ準位を直感的に理解する
電子が入ることのできるエネルギー状態を、階層状の座席にたとえると分かりやすい。低いエネルギーの座席から順に電子が入り、フェルミ準位は「どの高さまで電子が入りやすいか」を示す目安になる。
ただし実際の電子分布は温度の影響を受けるため、フェルミ準位より上にも電子が存在し、下にも空いた状態が生じる。
真性半導体のフェルミ準位
不純物をほとんど含まない真性半導体では、電子濃度と正孔濃度が等しい。理想的な場合、フェルミ準位はバンドギャップのほぼ中央付近に位置する。
シリコンの場合、熱によって価電子帯の電子が伝導帯へ励起されると、伝導帯に電子が1個生まれ、価電子帯には正孔が1個生まれる。そのため電子と正孔は対で生成される。
n型半導体のフェルミ準位
シリコンへリンやヒ素などのドナー不純物を導入すると、自由電子が増え、n型半導体になる。
電子濃度が増えると、フェルミ準位はバンドギャップ中央から伝導帯側へ移動する。ドーピング濃度が高いほど、一般にフェルミ準位は伝導帯へ近づく。
p型半導体のフェルミ準位
シリコンへボロンなどのアクセプタ不純物を導入すると、正孔が増え、p型半導体になる。
正孔濃度が増えると、フェルミ準位は価電子帯側へ移動する。ボロン濃度と抵抗率の関係については、シリコンにおけるボロンドーピングと電気抵抗率の関係で詳しく解説している。
ドーピングとフェルミ準位
| 半導体 | 主な不純物 | 多数キャリア | フェルミ準位 |
|---|---|---|---|
| 真性半導体 | なし | 電子と正孔が同数 | 禁制帯のほぼ中央 |
| n型半導体 | リン、ヒ素など | 電子 | 伝導帯側へ移動 |
| p型半導体 | ボロンなど | 正孔 | 価電子帯側へ移動 |
ドーパントを導入する代表的な製造技術がイオン注入である。
pn接合とフェルミ準位
p型半導体とn型半導体を接合すると、n型側の電子がp型側へ、p型側の正孔がn型側へ拡散する。その結果、接合部に移動キャリアの少ない空乏層が形成される。
熱平衡状態では、接合全体でフェルミ準位が一定になるようにエネルギーバンドが曲がる。このバンドの曲がりが内蔵電位を表し、ダイオードの整流作用につながる。
電圧を加えたときのフェルミ準位
外部電圧を加えて熱平衡から外れると、電子と正孔を一つのフェルミ準位だけで表すことが難しくなる。このとき、電子に対する準フェルミ準位と、正孔に対する準フェルミ準位を分けて考える。
LED、太陽電池、トランジスタなどの動作解析では、この準フェルミ準位が重要になる。
MOS構造とフェルミ準位
MOSFETでは、ゲート電圧によって半導体表面のエネルギーバンドを曲げ、表面のキャリア濃度を制御する。
たとえばp型基板上のnMOSでは、正のゲート電圧を加えると表面から正孔が遠ざかり、やがて電子が集まって反転層が形成される。この反転層がソースとドレインをつなぐチャネルになる。
フェルミ準位と仕事関数
真空準位からフェルミ準位までのエネルギー差を仕事関数という。金属と半導体を接触させると、双方のフェルミ準位が一致するまで電荷が移動し、界面に電位障壁が形成されることがある。
この関係は、ショットキー接合、オーミック接触、MOSゲート材料の選定に関係する。
フェルミ準位が重要な理由
フェルミ準位を理解すると、半導体の次の性質を一つの枠組みで説明できる。
- n型・p型の違い
- 電子濃度と正孔濃度
- pn接合の内蔵電位
- MOSFETの反転層形成
- 金属と半導体の接触特性
- LEDや太陽電池の非平衡状態
フェルミ準位は目に見える物理的な線ではないが、半導体内部の電子状態を読み解くための重要な基準である。

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