【2026年6月】TSMC、パネル封止「CoPoS」量産へ前進|先端パッケージ覇権を巡るSamsungとの構造的攻防

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結論:TSMC(台湾積体電路製造)が、AIチップ向け次世代封止技術「パネルレベルパッケージング(PLP)」の量産サプライチェーン構築に本格着手したと報じられた。中核となるのが同社独自の「CoPoS(Chip-on-Panel-on-Substrate)」だ。パッケージの土台を丸いウェハから四角いパネルへ移すこの転換は、単なる工程改善ではない。AIチップの「巨大化」が物理的限界に近づくなか、半導体の付加価値の重心が「微細化」から「封止(パッケージング)」へ移っていく構造変化を象徴する動きである。

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ニュースの要点:TSMCがPLP量産体制の構築に動く

韓国ETNews(SemiconductorsX経由、2026年6月15日)によれば、TSMCは装置・素材メーカーと交渉を進め、PLPベースの量産システムを2027年初頭に立ち上げることを目指しているという。同社は2025年にPLPのパイロットラインを立ち上げて評価を終え、すでにグローバルなAIチップ顧客を確保したとされる(報道ベース)。

TSMCはこの技術を「CoPoS」とブランド化している。台湾・嘉義(Chiayi)のAP7キャンパスにパイロットラインを設け、量産の本格立ち上げは2028〜2029年頃というのが業界の大方の見方だ。一方で著名アナリストのMing-Chi Kuo氏は2026年後半の量産入りという、より前倒しの観測も示しており、時期は情報源によって幅がある。なお、AI需要の逼迫でTSMCの先端能力が引っ張りだこである点は、TSMCの2026年第1四半期決算の好調にも表れている。

なぜ「丸いウェハ」から「四角いパネル」へ移るのか

背景にあるのは、AIチップのレチクル(露光単位)サイズの急拡大だ。NVIDIAの次世代GPU「Rubin」は5.5レチクル級に達するとされ、標準的な12インチ(300mm)の丸いウェハからは、こうした巨大パッケージがわずか4〜7個しか取れない。ウェハの円周部は捨て代となり、面積効率が悪い。

これに対しPLPは、四角いパネル(おおむね600×600mm級)を土台に使うことで、同じ工程から5〜6倍の取り数を得られる。AIアクセラレータ需要が爆発し、先端ウェハ能力が逼迫するなか、封止側の能力も歩調を合わせて拡張しなければ供給が回らない。台湾の能力集中を分散させる動きとしては、日本でのRapidusの2nm量産計画のような先端プロセス投資も並走する。CoWoSやSoICに続く「パネル化」は、AI時代の供給制約を解く鍵と位置づけられている。

ガラス基板という次の一手と「Feynman」

CoPoSのもう一つの肝はガラス基板である。Ming-Chi Kuo氏の整理(2026年6月)によれば、ガラスは2つの役割で使われる。1つは処理中の一時キャリア(310×310mm)、もう1つはより重要な、ガラスコア基板へ切り出されるガラスパネルだ。パネルはパイロットで250×250mm、量産で510×515mmへ拡大する見込みとされる。基板は中央にガラスコア、その両面にABFビルドアップ層を重ねる三層構造で、ガラスはインターポーザを置き換えるのではなく、TGV(ガラス貫通ビア)と銅配線が配線機能を担う。NVIDIAの次々世代「Feynman」が初採用候補として取り沙汰されている(報道ベース)。

Samsungとの先端パッケージ覇権争い

注目すべきは、このPLP領域でこれまで静かに先行してきたのがSamsungだという点だ。Samsungは2019年にSamsung Electro-MechanicsのPLP事業を取り込み、モバイル向けAP(アプリケーションプロセッサ)やPMIC(電源管理IC)に長年応用してきた。AIメモリで過去最高益を更新したSamsungの2026年第1四半期決算が示すとおり同社の地力は厚く、独自の「HPB(Heat Path Block)」を高性能コンピューティング/AI半導体へ広げ、ガラス基板も次のフロンティアとして視野に入れている。

つまりこの攻防は、微細化(プロセス)に続いて「封止」が新たな主戦場になったことを意味する。HBM(高帯域幅メモリ)の搭載が当たり前になり、HBMシフトが生むメモリ市場の構造SK hynixの好決算が示すように、チップを「大きく・賢く積む」技術の優劣が、AIチップ全体の性能とコストを左右するようになっている。

日本の装置・素材産業への含意

パネル化は日本企業にとっても無縁ではない。TSMCの2026年設備投資計画(総額520〜560億ドル)のうち1〜2割が先端パッケージ・テスト等に振り向けられるとされ、先端封止は2025年に売上の約8%、2026年には1割超へ拡大する見通しだ(報道ベース)。大判パネルの搬送・露光・検査・接着・封止には新たな装置と素材が要る。露光・成膜の前工程装置(ASMLの動向東京エレクトロンの業績)に加え、後工程・テスト領域(アドバンテストとApplied Materials)にも商機が広がる。大判化に伴う「反り(warpage)」の制御が量産化の最大の難関とされ、ここにこそ日本の精密技術が効いてくる。

構造的に見れば、CoPoSはAIチップの巨大化という需要側の圧力が、半導体製造の「土台の形」そのものを丸から四角へ変えていく転換点だ。微細化の限界が近づくほど、封止と基板の技術が次の競争軸になる——TSMCとSamsungの攻防は、その号砲と言える。

出典:ETNews/SemiconductorsX(2026年6月15日)、Sammy Fans/Ming-Chi Kuo氏の見解(2026年6月11日)、TrendForce(2026年4月13日)、all-about-industries(Vogel、CoPoS技術解説)。各社の量産時期・採用顧客に関する記述は報道ベースであり、TSMC・Samsungの公式発表とは異なる場合がある。

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