結論:SiC(炭化ケイ素)パワー半導体はシリコンに比べて高耐圧・高温動作・低損失を実現するワイドバンドギャップ半導体。EV(電気自動車)のインバーター・充電器・産業機器への採用が急拡大しており、Wolfspeed・STMicroelectronics・ロームが市場を争う成長市場だ。
SiCとは何か
SiC(Silicon Carbide:炭化ケイ素)はシリコン(Si)に比べてバンドギャップが約3倍(3.26eV)、絶縁破壊電界強度が約10倍、熱伝導率が約3倍のワイドバンドギャップ(WBG)半導体だ。この特性によりSiCデバイスはSiデバイスより大幅に高い耐圧・高温動作が可能で、スイッチング損失が低減できる。EV・産業機器・太陽光発電・鉄道など電力変換が重要な用途で急速に普及している。
SiCデバイスの種類と用途
SiCパワーデバイスの主役はSiC-MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)とSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)だ。EV用トラクションインバーター(モーター駆動用)にはSiC-MOSFETが使われ、従来のSi-IGBTに置き換えることで同等出力に対してインバーターの小型・軽量化と効率向上が実現できる。TeslaがModel 3(2018年)でST製SiC-MOSFETを搭載したことがEV向けSiC採用の起爆剤となった。
SiCウェーハと製造の特殊性
SiCデバイスの製造はシリコン半導体とは大きく異なる。SiCウェーハはSiの昇華法で成長させるため欠陥(マイクロパイプ・転位)が多く、高品質ウェーハの製造が難しい。また、SiCはシリコンより硬く、CMP・ドライエッチング・イオン注入など各工程でシリコン用の装置・プロセスをそのまま流用できないため、専用プロセスの開発が必要だ。ウェーハサイズは現在4インチ・6インチが主流で、8インチへの移行が進んでいる。
投資・M&A視点
SiCパワー半導体市場はWolfspeed(米)・STMicroelectronics(欧)・ローム(日)・Infineon(欧)・ON Semiconductor(米)が競争する。市場規模は2025年に50億ドル超、2030年には100億ドル超に拡大すると予測される。Wolfspeedはウェーハ製造から垂直統合しているが財務的に苦しく、買収ターゲットとして市場で注目されている。ロームは2023年にSiCモジュールメーカーのSiCrystal等を傘下に持ち、積極的に事業拡大している。中国もSiC国産化に注力しており、地政学リスクが事業戦略に影響する。
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