この記事のポイント:FST(Fine Semitech Co., Ltd.、韓国、1987年創業)はEUV・ArF(DUV)露光用ペリクル(フォトマスク保護膜)および半導体製造装置向けチラー(精密温調装置)の両製品を手掛ける韓国の精密部材メーカー。2025年10月にはフィンランドのCanatuからCNT(カーボンナノチューブ)ペリクル膜の商業生産ライセンスを取得し、EUV向けCNTペリクルの量産体制構築を進めている。ただし顧客企業や正式採用状況の詳細は公表されていない。チラーは半導体装置の精密温度制御に不可欠なインフラ部品として安定的な需要を持つ。
| 企業名 | Fine Semitech Co., Ltd.(FST) |
|---|---|
| 本社所在地 | 韓国 |
| 主力製品 | EUV/DUVペリクル(フォトマスク保護膜)・精密チラー(半導体装置向け温調システム) |
| ペリクル用途 | EUV(13.5nm)・ArF immersion(193nm)露光工程のフォトマスク汚染防止 |
| チラー用途 | CMP・CVD・エッチング・イオン注入装置の冷却水精密温度制御 |
| 主要市場 | Samsung・SKハイニックス・韓国半導体装置メーカー・TSMC等への輸出 |
EUVペリクルとは何か——世界で最も希少な半導体消耗品
ペリクルとはフォトマスク(回路パターンを焼き付けるガラス原版)の表面に被せるごく薄い保護膜(フィルム)だ。ペリクルが露光光を透過しながらマスクへのパーティクル付着を防ぐことでウェハへのパターン転写欠陥を防ぐ。EUV露光(波長13.5nm)用ペリクルは光の透過率90%以上・膜厚50nm以下という極限の薄さが求められ、多結晶シリコン・SiN・CNT(カーボンナノチューブ)などの素材で世界数社しか製造できない「最希少な半導体消耗品」だ。
ポイント:EUVペリクルの主要サプライヤーはASMLの子会社ASML Pellicle・三井化学・S&Stech(韓国)など少数に限られる。FSTは従来型ペリクルと半導体プロセス用チラーを主力としつつ、2025年10月にCanatuからCNTペリクル膜の商業生産ライセンスを取得したことでEUV向け製品の量産体制構築を進めている。ただし、ASMLやTSMCへの正式採用・量産納入の実績は現時点では公表されていない。
主要製品・技術
① EUVペリクル開発・製造
多結晶シリコン・SiNをベースとした薄膜EUVペリクルの研究開発・試作・量産化に取り組む。EUVペリクルは350℃を超えるEUVプラズマ環境での熱耐性・EUVフォトン照射への耐久性・超薄膜の均一性という三重の技術難題を解決する必要がある。さらに2025年10月、フィンランドのCanatu社はFSTに対してCNT100 SEMIリアクターを使用したCNTペリクル膜の商業生産ライセンスを付与した。CNTペリクルはEUV光の透過率・耐熱性・強度で次世代素材として注目されており、FSTのEUVペリクル事業を大きく前進させる取り組みとして位置づけられる。ただし顧客向けの量産出荷・正式採用の詳細は公表されていない。
② DUV(ArF)ペリクル——安定供給品
ArF immersion(193nm)露光向けのPTFE・フッ素系薄膜ペリクルはEUVより量産が容易で、FSTの主力収益源。DUVペリクルは193nmの光をほぼ100%透過する超薄膜(700nm程度)でありながら洗浄・管理が難しく、Samsung・Hynixの量産ラインに定期的に消耗交換される消耗品として安定受注を確保している。
③ 精密チラー(半導体装置向け冷却温調装置)
CMP・CVD・プラズマエッチング・イオン注入各装置の冷却水を±0.1℃精度で温度制御するチラーユニット。SMIF環境・クリーン仕様・SEMI規格準拠で設計され、韓国国内装置メーカーへのOEM供給および補修部品供給で安定収益を確保する。チラー事業はペリクルR&D投資を支えるキャッシュカウとなっている。
編集部によるM&A・事業提携の考察
以下は公開情報を基にした当メディア独自の分析であり、具体的な交渉や計画が公表されているものではない。
FST(非上場)はEUVペリクルという希少な半導体消耗品の開発企業として注目度の高いポジションにある。EUVペリクルの量産ライセンス取得(Canatu CNT)はFSTの事業基盤を強化するが、量産体制・顧客採用の確立はこれからの段階である。半導体材料サプライチェーンの多様化という文脈で、韓国政府の支援や大手装置・材料メーカーとの提携シナリオは論理的に考えられる。詳細は半導体業界の全体構造を読むも参照。
※本記事は公開情報をもとに作成した分析・解説記事です。投資判断等の根拠として使用する場合は、必ず一次情報をご確認ください。情報は執筆時点のものであり、最新状況とは異なる場合があります。
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