結論:2026年6月、Intelのファウンドリ(受託製造)事業に大型受注の観測が相次いだ。The InformationやReutersは6月8日、GoogleがIntelに2028年までに300万個超のTPU(AI用半導体)の製造を委託し、NVIDIAも次世代GPU向けにIntelの最先端プロセス「18A」を評価していると報じた。各社は公式確認を避けているが、報道を受けてIntel株は急騰。AI半導体の製造をTSMC一社に依存するリスクを、巨大顧客が本気で分散し始めた——その兆候として市場は受け止めている。
GoogleのTPU受注観測 — 2028年生産の約半分か
報道によれば、Googleは広範な検証を経て、2028年までに300万個超のTPUをIntelに発注したとされる。モルガン・スタンレーの推計ではGoogleの2027〜2028年のTPU生産は600万個超とされ、仮に事実ならIntelが2028年生産の約半分を担う計算になる。
背景にあるのは、Intelの先進パッケージング技術「EMIB(埋め込み型マルチダイ・ブリッジ)」の歩留まりが約90%に達したとの観測だ。GoogleのTPU v8e(2027年後半)への採用も取り沙汰されている。さらにIntelは次世代「14A」プロセスでTesla(テスラ)を初の大口顧客として確保したとも報じられており、ファウンドリ事業の顧客基盤が一気に厚みを増しつつある。
NVIDIAは「18A評価」段階 — 本命は依然TSMC
一方、NVIDIAの関与は評価段階にとどまる。報道では、4つのGPUダイを1パッケージに統合する次世代「Feynman(ファインマン)」アーキテクチャ向けに、Intelの18Aと先進パッケージングが検討されているという。NVIDIAはすでにMPW(マルチプロジェクト・ウエハ=複数顧客が1枚のウエハを相乗りして試作する手法)で18Aの製造可能性を検証し始めた段階だ。
ただし本命は依然TSMCである。現行のRubin GPUはTSMCの3nm+CoWoS(先進パッケージング)で製造され、Feynmanも当初はTSMCのA16プロセスが有力とされてきた。AI需要を取り込むTSMCの強さは足元の業績にも表れており、詳しくは【2026年4月】TSMC Q1決算・3月売上が過去最高で解説している。今回の報道は「TSMC外し」ではなく、あくまで第二供給源の確保と読むのが妥当だ。
興味深いのは、IntelとTSMCが競合しながら協業する「コーペティション(協調的競争)」の関係にあることだ。報道では、Intel自身の次世代CPU「Nova Lake」の演算ダイは、逆にTSMCの2nmプロセスへ外注されるとされる。最先端ロジックの世界では、もはや一社で全工程を完結させるのではなく、プロセスとパッケージングを組み合わせて最適解を探る「マルチファウンドリ」が常態化しつつある。
なぜ「分散」なのか — 構造的な意味
これらの観測が示すのは、AI半導体の製造が特定1社に集中するリスクへの警戒だ。AI需要の急拡大で先端ノードの生産能力は逼迫しており、Google・NVIDIAのような巨大顧客ほど「第二の供給源」を確保したい誘因が強い。Intelにとっては、自社製品(18A初の主力製品となるPanther Lake)だけでなく外部顧客を取り込めるかが、長く赤字に苦しんだファウンドリ事業の黒字化を左右する。Intelは18Aが2027年に高い利益率に達しうるとの見方も示している。
ただし、現時点ではいずれも報道ベースであり、Google・NVIDIA・Intelの3社とも内容を公式に認めていない点には注意が必要だ。それでも市場が敏感に反応したのは、「TSMC一強」という前提が崩れれば、半導体サプライチェーンの力学そのものが変わるからだ。受注の確度よりも、巨大顧客が分散を検討し始めたという事実自体が、構造変化のシグナルとして重く受け止められている。
日本・台湾勢への波及
ファウンドリ勢力図の変化は、装置・材料を担う日本勢にも波及する。先端プロセスと先進パッケージングへの投資拡大は、露光装置(参考:ASML Q1決算)や検査・後工程(参考:アドバンテスト×Applied Materials提携)の需要を押し上げる。国産2nmで巻き返しを狙うRapidusにとっても、TSMC一強の緩みは追い風となりうる。
一方で米国は中国向け先端製造装置の規制を強めており(参考:米国のHua Hong向け装置規制)、ファウンドリ競争は地政学と一体で進む。「誰が、どこで作るか」という製造の地図そのものが、AIによって描き換えられようとしている。
出典:The Information、Reuters、TrendForce(いずれも2026年6月8〜9日報道)。各社は報道内容を公式には確認していない。

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