【2026年9月】世界半導体売上が上期7,020億ドル・前年比102%増──「メモリ305%増」が示す価値配分の反転

半導体最新ニュース|統一サムネイルテンプレート

結論:2026年上期(1〜6月)の世界半導体売上は7,020億ドル、前年同期比102%増となり、半年で2025年通年(7,956億ドル)の約88%に達した。ただしこの「倍増」は産業全体が均等に膨らんだ結果ではない。メモリが305%増、ロジックが45%増という極端な非対称が実態であり、いま起きているのは市場規模の拡大というより、付加価値の配分がロジックからメモリへ大きく移動する構造の反転である。金額の伸びをそのまま需要の伸びと読むと、投資判断もM&Aのバリュエーションも確実に狂う。

目次

上期だけで前年通年の88%──数字の全体像

WSTS(世界半導体市場統計)の集計によれば、2026年上期の世界半導体売上は7,020億ドルで前年同期比102%増。2025年の通年市場が7,956億ドルだったので、わずか半年でその約88%を消化した計算になる。

加速したのは第2四半期だ。SIA(米半導体工業会)がWSTS統計を基に集計した4〜6月期の売上は4,033億ドルで、前四半期比35.1%増。6月単月では1,345億ドルとなり、前年同月比123.6%増、前月比でも9.7%増と、月次ベースで見ても勢いが落ちていない。

地域別の6月の伸び率は、米州が160.9%と突出し、アジア太平洋その他が124.4%、中国112.8%、欧州75.2%、日本39.0%と続く。ここで日本の39%を「日本の弱さ」と読むのは早計だ。この統計は半導体デバイスの売上を計上地ベースで集計するため、日本の強みである素材・部材・製造装置の需要増は直接は反映されにくい。むしろ地域差が示しているのは、AIデータセンター投資が集中している場所に、そのまま売上が積み上がっているという単純な事実である。

伸びの正体はメモリ305%増──ロジック45%増との落差

製品カテゴリー別に分解すると、市場の姿は一変する。上期のメモリ市場は前年同期比305%増、対してロジックは45%増。センサーを含む他の主要カテゴリーもすべてプラス成長で、一部セグメントだけのバブルではない。しかし4倍と1.45倍では、同じ「成長」という言葉で括るのが不適切なほど傾斜が違う。

メモリだけが3倍を超えた理由は、数量ではなく単価にある。HBMとサーバー向けDRAM、そしてエンタープライズSSDが同時に需給逼迫に陥り、契約価格が跳ね上がった。供給側の動きを見れば逼迫の深さは明らかで、マイクロンはHBM生産能力を年内に2倍・月産10万枚へ引き上げる方針を進め、サムスンはHBM5・zHBMのロードマップを開示して次世代の主導権を狙う。NAND側でもエンタープライズSSDが1四半期で2倍・375億ドル規模に膨らんだ。そのしわ寄せは最終製品にまで届いており、iPhone 18のメモリ原価は前年比約400%に達したと報じられている。

動いているのは数量ではなく単価である

ここが今回の統計を読むうえで最も重要な論点だ。金額ベースで市場が2倍になったからといって、世界で流通するチップの数量が2倍になったわけではない。ウエハ投入枚数も、パッケージ処理数も、2倍にはなっていない。

前工程側の数字と並べると輪郭がはっきりする。TSMCの必要装置台数は半年で1.9倍、CapExは15%増にとどまる。物理的な生産能力の拡大は着実ではあるが、売上の102%増に見合うほど急峻ではない。差分の多くは価格上昇によって生じている。

この区別はM&Aや投資の実務では決定的な意味を持つ。価格由来の利益はサイクルが反転すれば消えるが、数量由来の利益は設備と顧客基盤に紐づいて残る。2026年の業績を前提に対象企業を評価するなら、EBITDAのうちどれだけが単価上昇によるもので、どれだけが出荷数量の増加によるものかを分解しなければならない。この分解を省いた買収は、価格ピーク時の利益に対してマルチプルを払うことになる。

2026年1兆6,550億ドル、2027年2兆1,000億ドルという前提

WSTSは第2四半期の実績を織り込んで6月時点の春季予測を上方修正し、2026年通年の世界半導体市場を1兆6,550億ドル、前年比約108%増と算出した。当初の春季予測より成長率で18ポイント高い水準だ。牽引役はやはりメモリで、通年302%増(春季予測比+53ポイント)と見込む。センサーを除くすべての主要セグメントも上方修正された。2027年については約2兆1,000億ドル、前年比約29%増との見立てが示されている。

ただしこの2027年の数字は、第2四半期の実績を差し替えたうえで、第3四半期以降は6月時点の前提を据え置いて機械的に計算したものだ。実質的には「高い価格水準が続く」という前提を内包している。マイクロン、サムスン、SKハイニックスが同時に進める増設が本格的に効いてくる2027年後半以降、価格が緩めば下振れする余地は小さくない。報道ベースの推計値であり、確定した将来像として扱うべきではない。

この統計から実務的に何を読むか

第一に、サプライヤーを見るときは「数量連動か価格連動か」で分類することだ。メモリメーカーの利益は価格連動、装置・部材メーカーの利益は数量(ウエハ投入・装置設置台数)連動である。市場全体が102%増でも、後者の伸びはそれよりはるかに緩やかになる。

第二に、供給の確保が資本関係に置き換わり始めている点だ。GoogleがMarvellから122億ドルの株式ワラントを取得したように、発注では足りず資本で供給を縛る動きが出ている。値上げも単なるコスト転嫁ではなく、ADIの再値上げのように増産原資の確保という性格を帯びてきた。

第三に、ボトルネックの移動先を追うことだ。演算性能そのものより、メモリ帯域と配線・光接続(CPO)が制約になりつつある。7,020億ドルという数字の裏側で起きているのは、AI半導体の価値がどの工程に滞留するかの再配置であり、そこに参入・買収の機会も集中している。

出典:Electronic Times(ETNews)「Global Chip Sales Double in First Half」2026年9月2日/WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)春季予測および第2四半期実績反映値/SIA(Semiconductor Industry Association)月次統計/Electronic Times「US Micron to Double HBM Capacity, Closing Gap with Samsung and SK」2026年9月4日


半導体業界のM&A・参入・投資をご検討の方へ

本記事のような業界構造の分析をふまえ、半導体業界へのM&A・新規参入・企業分析を実務目線でご支援しています。まずはお気軽にご相談ください。

🏢 お問い合わせ:テックメディックス総研株式会社

◆ M&A・投資視点のより深い企業分析はnoteで公開しています
半導体業界動向マガジン(高野聖義)

◆ 半導体業界へのM&A・参入・コンサルティングをご検討の方
初回相談無料|テックメディックス総研株式会社

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次