【2026年8月】サムスン・ファウンドリーが下半期「稼働率100%」へ——HBM4ベースダイと米国受注が示す構造転換

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結論:サムスン電子の2026年4〜6月期決算は「メモリ一本足の好決算」だった。全社営業利益の99.7%をメモリ事業が稼ぎ、ファウンドリー(受託製造)は依然として赤字である。しかし報道ベースでは、そのファウンドリーが2026年下半期に稼働率100%へ到達し、早ければ第3四半期に黒字転換する可能性まで語られ始めた。反転を駆動しているのは、AIメモリHBM4の「ベースダイ(土台チップ)」と、米国大手からの2nm世代の受注である。ここで起きているのは単なる業績回復ではなく、メモリ事業とファウンドリー事業が構造的に接続され直すという地殻変動だ。本稿では、海外報道が伝えるサムスンの数字を日本語で噛み砕きながら、「構造的に何が起きているのか」を解説する。

目次

メモリが利益の99.7%——ファウンドリー赤字を覆い隠す「いびつな好決算」

まず全体像を押さえておきたい。TrendForceが2026年8月3日に伝えたところによれば、サムスンは先週の決算説明会で市場予想を上回る好決算を示したが、その利益はほぼ全額がメモリ事業由来だった。営業利益に占めるメモリの寄与は99.7%。裏を返せば、ファウンドリーやSystem LSIといった非メモリ事業は、2026年第2四半期だけで約6,000億ウォンの赤字を計上したと推計されている(Newsis報道ベース)。

この「いびつさ」こそ、今のサムスンを読み解く出発点だ。HBMを中心としたAIメモリ特需が全社を潤す一方で、本来は次の成長の柱に据えたはずのファウンドリーが足を引っ張っている。実際、前年には主力ノードである4nm・5nmの稼働率(アップタイム)が50%を割り込む局面もあった。装置を遊ばせれば固定費が重くのしかかり、赤字は膨らむ。半導体の受託製造は、稼働率が採算を決める典型的な装置産業なのである。

稼働率70〜80%→100%へ:反転を駆動する2つのエンジン

そのファウンドリーに変化が起きている。Chosun Bizによれば、サムスン・ファウンドリーは現在70〜80%の稼働率を、2026年下半期に100%まで引き上げることを狙っているという。前年に5割を割っていたことを思えば、これは急激な反転だ。反転を駆動しているエンジンは大きく2つある。ひとつはAI向け先端製品、とりわけHBMのベースダイ需要。もうひとつは米国大手テック企業からの受注増だ。

稼働率が上がるということは、同じ装置・同じ工場から生み出す付加価値が増えるということを意味する。空いていたラインが埋まれば、限界的に上乗せされる売上のほとんどが利益に変わる。だからこそ、一部のアナリストは黒字転換の時期を、韓進萬(ハン・ジンマン)氏がかつて示した2028年という目標から大幅に前倒しし、早ければ2026年第3四半期とみる強気の見方まで示している(HuffPost Korea報道ベース)。もっとも、これはあくまで予測であり、先端ノードの立ち上がり次第で振れる点には注意が必要だ。

HBM4ベースダイという「構造的な接着剤」

今回の反転劇の主役は、HBM4の「ベースダイ」だ。HBMはDRAMチップを何段も積み重ねた3次元メモリだが、その最下層には、積層したメモリと外部(GPUやAIアクセラレータ)とを橋渡しするロジックチップ=ベースダイが必要になる。従来このベースダイは比較的枯れた工程で作られてきたが、HBM4世代では性能要求が跳ね上がり、先端ロジックのファウンドリー工程で製造される流れが強まっている。

ここに構造転換の核心がある。ベースダイは、サムスンにとって「メモリ事業」と「ファウンドリー事業」を一社内で接続する接着剤になる。メモリ側でHBM4の需要が爆発すれば、そのベースダイ製造を通じてファウンドリーの稼働率も自動的に押し上げられる——垂直統合型のサムスンだからこそ効くシナジーだ。HBMの土台となるロジックチップは、最終的にパッケージング(封止・実装)工程で積層メモリと一体化され、AIアクセラレータに供給される。TSMCやインテルには単純に真似できない、メモリとロジックを両方持つプレイヤーならではの武器と言える。

2nm歩留まり60%の壁と、それでも集まる大口顧客

ただし、順風満帆というわけではない。反転を持続できるかどうかは、先端ノードの立ち上がりと歩留まり(良品率)の改善にかかっている。Chosun Bizによれば、サムスンの2nmプロセスの歩留まりは現状およそ60%。大規模な量産契約を取りに行くには70%程度まで引き上げる必要があるとされる。2025年後半に約20%だった水準からは大きく改善したものの、業界が安定量産の目安とする水準にはまだ届いていない。

歩留まりが数十%動くだけで採算が一変するのが先端ノードの世界だ。だからこそ、地道な歩留まり改善や、マルチパターニングをはじめとする微細加工技術の作り込みが、契約獲得の生命線になる。それでも、大口顧客はサムスンに集まりつつある。News1によれば、ブロードコムなど大手との先端ノード取引が広がり、2nmの受注量は前年比で2倍以上に増える見込みだという。さらにThe Informationは、グーグルが次世代TPU(開発コード「Icefish」)の主要演算ダイをTSMCに委託する一方、メモリと接続するI/O関連部品をサムスンの2nmで製造する可能性があると報じている。顧客はリスク分散のため、TSMC一極集中を避けたい——この地政学的・調達戦略的な力学が、サムスンに追い風を送っている。

日本の関係者が読むべき構造的含意

最後に、この動きが示す構造的含意を整理したい。第一に、サムスンの事業ミックスが変質している。Chosun Bizによれば、先端ノードが今年のファウンドリー売上の50%超を占め、AI・HPC関連売上は前年の10%台後半から30%超へ上昇する見通しだ。ファウンドリーが「安価な受託工場」から「AI時代の付加価値工場」へと軸足を移しつつある。第二に、HBMを起点にメモリとロジックが融合する潮流は、イオン注入や検査・電子ビーム検査といった前工程の装置・材料需要にも波及する。HBM4ベースダイの量産は、先端ロジック装置の追加投資を伴うからだ。

第三に、これはTSMCの牙城に対する構造的な揺さぶりでもある。TSMCの2nmが引き合いで埋まり、先端パッケージも逼迫するなか、顧客にとって「第二の先端ファウンドリー」の価値は高まっている。サムスンの稼働率100%が現実になれば、AI半導体のサプライチェーンが単一ベンダー依存から複線化へ向かう象徴になるだろう。日本の装置・材料メーカーにとっても、調達先の選択肢が広がることは中長期的にプラスに働きうる。数字はなお報道ベースを含むが、メモリ特需とファウンドリー反転の同時進行が、当面の業界を読む軸になる。

出典:TrendForce「Samsung Foundry Eyes 2H26 Full Utilization as HBM4 Base Dies and U.S. Orders Fuel Turnaround Hopes」(2026年8月3日、Chosun Biz・Newsis・HuffPost Korea・News1・The Informationを引用)。将来見通し・歩留まり等の数値は報道ベースの推計を含む。


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