結論:TrendForceは2026年10月20日、4Q26(10〜12月期)のDRAM契約価格が前期比で約20%上昇するとの見通しを示した。価格は上がり続けるものの、上昇率は2Q26の約80%、3Q26の約40%から半分ずつに縮んでいる。局面は「値上がりの加速」から「高値の持続」へ移りつつある。減速の主因は需要の崩れではなく、契約の仕組みが作る価格の天井にある、というのが本稿の読みだ。なお以下はTrendForceの記事とその引用元報道に基づく内容であり、報道ベースである。
何が示されたのか:80%、40%、20%という減速の階段
TrendForceの見通しでは、DRAMの契約価格は2Q26に約80%、3Q26に約40%、そして4Q26に約20%上昇する。水準は依然として大幅な値上がりだが、前期比の伸びは四半期ごとに半減している。同社は減速の理由として三つを挙げる。比較基準(ベース)が高くなったこと、最終製品市場の購買力が弱まっていること、そして長期供給契約(LTA)に設定された価格上限が徐々に効き始めていることだ。
メーカー側の収益はすでに極めて高い水準にある。たとえばSK hynixの7〜9月期決算やSamsungの7〜9月期速報は、メモリ価格の上昇が利益にどれだけ直結したかを示していた。上昇率が鈍っても、四半期の価格水準そのものは前期より高いままだという点は押さえておきたい。
減速の正体は「LTAの天井」という契約構造
ここで重要なのはLTAの役割である。LTAは、メーカーと大口顧客が数量と価格の幅をあらかじめ取り決める契約だ。市況が急騰する局面では、顧客にとっては価格上昇を抑える防波堤になり、メーカーにとっては需要を長期で確保する手段になる。上限が効き始めれば、契約価格は市況にそのまま追随しなくなる。価格が下がるのではなく、上がり方が鈍るのはそのためだ。
実際、記事によればDRAMのスポット価格はCXMTの発表後も上昇を続けている。契約価格が頭打ちに近づく一方でスポットが上がるなら、両者の乖離が広がり、価格決定力が「その都度の交渉」から「契約の条文」へ移っていることを意味する。メーカーが株主還元を約100兆ウォン規模に拡大できる背景にも、このように収益が長期契約で下支えされる構造がある。供給面でも、巨額投資でも供給増は2028年以降という見方があり、需給の逼迫が簡単には解消しないことが価格の下値を支えている。
需要側の構造:AI推論とKVキャッシュが押し上げる
需要の中心は引き続きAIだ。TrendForceは、AI推論の拡大、モデルの大型化、コンテキスト長の延伸、そしてKVキャッシュの増大が、とくにサーバー向けDRAMとエンタープライズSSDの需要を押し上げていると整理している。学習だけでなく推論が中心になるほど、メモリは「GPUに付随する部品」ではなく、処理量そのものを決める制約条件になる。
一方、供給側では成熟世代の製品の供給が限られ、主要メーカーは付加価値の高い製品を優先している。汎用DRAMの増産余地が小さいまま、AI向けの需要が高付加価値品に集まるため、汎用品も含めた全体の需給が締まりやすい。AI投資の裾野が広がっていることは、GPUの外側へ価値が移るという別の記事で扱ったネットワーク市場の拡大とも重なる。装置側でもLam Researchの過去最高売上が示すように、設備投資は高水準を保っている。
HBMの層数とCXMT:もう一つの価格決定要因
TrendForceは、2027年にはHBMの8層品が12層品よりも1Gbあたり10〜20%高くなると見ている。層数が少ないほどベースダイ(土台のロジックチップ)がコストに占める割合が大きくなるためだ。さらにCommercial Timesの報道によると、NVIDIAがRubin Ultraで12層から8層へ移行した場合、GPUあたりのHBM容量は約33%減り、同じDRAMダイ供給で理論上は約50%多くのGPUを支えられる。メモリ供給の制約をGPU側の設計で緩める動きであり、HBMは8層が主流になるという見方とも整合する。ただし、これは報道ベースの試算であり、確定した設計ではない。
もう一つの変数が中国のCXMTだ。同社の4F²構造はセル面積を6F²比で約3分の1縮められるが、セルが小さいからといって1枚のウエハーから取れる有効ビット数が同じ比率で増えるとは限らない。歩留まり、リーク電流、データ保持といった課題が残り、本格的な商用化は2028年以降とみられている。AppleやTeslaがCXMTやYMTCの採用に言及したという報道もあるが、アナリストは短期的な価格への圧力は限定的と見ている。キオクシアの高い利益率やCoWoSの値上げ検討にも見られるとおり、供給網の他の部分でも値上げが通る環境が続いている。
読み解きのポイント:次に見るべきもの
今回の見通しが示すのは、メモリ市況が「急騰」から「高止まり」へ移る転換点である。注目点は三つある。第一に、LTAの価格上限が来期以降どこまで契約価格を縛るか。第二に、スポットと契約の乖離がいつ縮まるか。第三に、8層HBMへの設計移行やCXMTの量産が、2027年以降の需給にどれだけ影響するかだ。価格の上昇率が下がっても、供給が増えない限り水準は下がらない。この構造を押さえておくことが、メモリ関連企業の収益や投資を見るうえでの出発点になる。
出典:TrendForce News「DRAM prices seen rising ~20% QoQ in 4Q26」(2026年10月20日、Commercial Times、MoneyToday、Chosun Biz等の報道を引用)
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